仕上げの段階で時間をかけたのはデザインだった。奇抜なスタイルのものも提案されたが、小柴は「機能が奇抜なので、むしろ“扇風機然”としたデザインにこだわった」という。
HEATECは、家電分野では大手が手掛けないところを攻めるのを身上としている。たとえば暖房機器分野では、「ゾーンヒーティング」というコンセプトで、限られた範囲だけを効率的に暖める商品を投入している。小柴のヒット作では、1辺が30センチという超ミニサイズの足元用コタツがあり、同社の冬の定番商品となっている。
商品を企画開発する際に小柴が目指すのは、ユーザーに「ワクワク感」を与え得るモノづくり。ヒットを生む要諦はまだ分からないというが、少なくとも自分たちが「ワクワク」できなければ、「お客様の共感は得られない」ということは分かってきた。(敬称略)
(写真:井上智幸)
■メイキング オブ ヒットメーカー 小柴博貫(こしば・ひろゆき)さん
HEATEC 取締役 企画室長
1974年生まれ
東京都品川区生まれ。幼少の頃から外で遊ぶことの多い活動的な性格であった。小学3年から少年野球チームに所属。中学校でも野球部に入り、関東大会にも出場した。
1990年(15歳)
早稲田大学高等学院に進学し、グランドホッケー部に入部。インターハイ、国体に出場した。高校3年の夏休みには1カ月半ほどアメリカ西海岸の都市に単身語学留学。「父に勝手に予定を決められ、当時は本気で怒った」。
1993年(18歳)
早稲田大学理工学部電子通信学科へ進学。勉学に励む傍ら、テニスサークルに所属する、ホノルルマラソンに参加するなどして、青春を謳歌した。
1997年(22歳)
NECに入社。法人用基幹システムの構築、業務用ソフトの販売など、開発と営業の両面に携わった。
2000年(25歳)
当時の社長であった父に誘われHEATECに入社。商品開発に関わる業務全般を担当する一方、04年には広東省中山市にある中国工場の立ち上げを任された。今でも工場の運用を管理しており、2カ月に1度は現地へ足を運ぶ。また、良質安価な部品を求め、アジア各国を中心に海外からの資材調達も行う。船の手配など、輸出入の管理もしており、担当範囲は広いが、「やはり商品開発が一番楽しい」。大手が目を付けないような商品の開発に日々精力を注いでいる。
[特集] ヒットメーカーたちの物語
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。