2024年7月16日(火)

食の「危険」情報の真実

2023年8月4日

 もちろん、発症して重症化するかどうかは人間の側の事情も大きく関係する。このため、体力に自信があるなら自己責任で食べればいい、という考えもある。ただ、食品でリスクを認識しなければいけないのは、食中毒の原因となる細菌やウイルス、寄生虫で、これらによる食中毒は防ぐことができる。

 魚介類なら加熱か冷凍、動物の肉やレバーはよく加熱(中心部まで75℃で1分間以上など)することだ。時代によって食中毒の原因物質は変わっても、予防のためにやるべきことは変わらない。

フリマアプリで気を付けなければならないこと

 実際に食中毒は起きていないものの、今心配されているのがメルカリなどネット上のフリーマーケットでの食品の扱いだ。要冷蔵(0~5度)食品なのに常温配送されるケースが散見され、消費者庁が注意を呼び掛けているが、なかなか浸透しない。

 過去には要冷蔵食品の保存状態が悪いことでボツリヌス菌の食中毒が起きている。筆者が記憶しているのは、真空パックで要冷蔵保存の「あずきばっとう」(ぜんざいにうどんが入った食品)を食べた60代夫婦が意識不明の重体となったケースだ。

 ボツリヌス菌は土壌や海、川などにいる嫌気性菌(酸素があると増えることができない菌)。120度4分間以上の加熱処理で死滅するが、この条件で加熱処理されていない瓶詰や真空パックなど要冷蔵食品に菌がいる場合、常温に放置すると菌が増え、毒素を作る。この毒素を含む食品を食べることで食中毒が引き起こされる。

 原因食品を食べてから、通常は18~48時間で発症する。症状は、物が二重に見えたりかすんだりする、まぶたが垂れ下がる、ろれつが回らなくなるなどの神経症状で、治療が遅れると呼吸困難などで死亡する。

 個人間のやり取りのフリマは、売る側に自分が事業者という自覚がない場合も少なくない。しかし、要冷蔵食品を常温で送り、それを食べた人が食中毒となった場合、送った側に責任が問われることがある。

 責任が食品を送った側にあるとしても、死亡や重篤な後遺症となったときに、きちんと補償してもらえるかは別問題だ。事業者なら保険などに入っているだろうが、フリマ利用の個人でそこまでしている人はいないだろう。買う側も、「常温発送」と表示されている要冷蔵食品は買わないなどの自衛策を講じるにこしたことはない。

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