遺伝子組換え食品の表示がこの2023年4月から変わる。どのように変わるのか、これまでの表示をふりかえってみよう。
3月までの表示のルールは01年に始められたものだった。遺伝子組換え原料を使った場合は「遺伝子組換え原料使用」と表示、組換え原料と非組換え原料を生産流通過程で分別していない場合は「不分別」と表示しなくてはならない。義務表示対象品目は、大豆やトウモロコシ、なたねなど9農産物とそれを原料とした33食品で、最終製品で遺伝子を組み換えた痕跡が確認できるものに限定されていた(図1)。
生産流通過程での分別とは、栽培、収穫、保管、輸送の各段階で遺伝子組換え作物とそうでない物を厳格に分別されていることを確認し、署名して取り扱うことである。写真は04年に筆者が撮影した穀物を船に積み込むベルトコンベアーと、米国ミズーリ州セントルイスの倉庫である。分別して扱うためには作物を乗せる度にベルトコンベアーを洗浄し、倉庫も分けなければならない。輸出国では大量の穀物を複数種扱っており、不検出というのがかなり厳しい管理を求めていることは想像に難くない。
一方、対象食品の多くは食用油、甘味料であったため、遺伝子を組み換えて合成したタンパク質などを精製の過程で使っていても最終製品では検出できないため、表示義務はない。消費者は、遺伝子組換え作物・食品の使用を目の当たりにせずに暮らしてきた。
また、「遺伝子組換えでない」という任意表示は、意図しない混入が5%以下(遺伝子組換え原料と非組換え原料を分別して扱ってきても、少し混ざってしまう)のときにできる仕組みになっていた。「ない」表示の中にも遺伝子組換えが含まれていることもある中で、遺伝子組換え食品を避けられると思ってきた消費者も少なくない。