2024年11月21日(木)

食の「危険」情報の真実

2023年3月31日

 最近のデータでは、バイテク情報普及会が「遺伝子組み換え/ゲノム編集食品に対する 消費者の意識調査 ~2021年度調査結果」を行っている。食品を選ぶときの関心事項は価格が52%と最も高く、次が賞味・消費期限の17.7%で、遺伝子組換えかどうかは8位で1.1%だった。

図3 食品を選ぶ時の関心事
(出所)遺伝子組み換え/ゲノム編集食品に対する 消費者の意識調査 ~2021年度調査結果~

 遺伝子組換え食品へのイメージは「悪い・怖いイメージを持っている」または「どちらかといえば悪い・怖いイメージを持っている」と回答した人はあわせて52.2%であったが、年代別に見ると、50代、40代、30代、20代と若い人ほどイメージは悪くなく、20代で「悪い・怖いイメージを持っている」または「どちらかといえば悪い・怖いイメージを持っている」と回答した人の合計は40.6%で若い人ほど印象は悪くないようだ。

 食には個人の好みやこだわりがあり、遺伝子組換え食品に対して人工のイメージを感じたり、避けたりしたい方がいて当然である。ここで気になるのは、ネガティブなイメージを持つ1043人の2割が「遺伝子組換えでない」という表示をきっかけとしていることだ。今回の改訂で「遺伝子組換えでない」という表示を目にする機会は激減するであろうから、遺伝子組換え食品へのイメージは少し変わってくるのかもしれない。

図4 遺伝子組換え食品にネガティブな印象を持つ理由 (出所)「遺伝子組み換え/ゲノム編集食品に対する 消費者の意識調査」 写真を拡大

「不安が払しょくされない」と言い続けるべきなのか

 このようなアンケート結果と生協などでの不分別表示食品の販売の様子を見比べると、ことさらに遺伝子組換え食品について問えば不安の理由を挙げる人はいるが、消費者は輸入が始まった20数年前に比べて、遺伝子組換えについてあまり気にしなくなっているように思える。実用化されたころは、北米の大規模経営をしている生産者にだけ、恩恵をもたらすという抵抗感が高かったが、この10年ほど、遺伝子組換え作物の栽培面積は発展途上国が先進国を上回っている。遺伝子組換え作物は先進国だけが得をするものではなくなり、見える世界の景色は随分変わった。

 遺伝子組換えに特化したアンケート結果をもとに、「不安が払しょくされない遺伝子組換え食品」と、同じ枕詞は繰り返すメディアや行政は少なくない。ただ、四半世紀以上、大量の遺伝子組換え作物によって食生活を支えられてきており、この枕詞の有効期限も切れているのではないだろうか。

 一部の週刊誌で、「『遺伝子組換えでない』という表示される食品が減り、遺伝子組換え食品を避けたい消費者の選択肢が減った」という報道がみられる。変わったのは表示だけで、日本の遺伝子組換えの輸入・消費状況はこれまでと変わっていない。

 それよりも4.9%の意図しない混入のある食品を「遺伝子組換えでない」と思って選んできた消費者にとって、今回の表示改訂は実態にあった表示への改善として意味があると言えるだろう。

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