遺伝子組換え食品の表示で何が変わるか
食品表示法が13年にできたときに、栄養成分表示、原料原産地表示などの見直しが順々に行われ、17年度、遺伝子組換え食品の表示制度の見直しを行う「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が立ち上げられた(2019年に報告書公開)。
この検討が始まった背景には、(1) 義務表示の対象食品(図1)を拡大してほしい、(2) 5%未満の意図しない混入があっても「遺伝子組換えでない」と表示できる仕組みを改めてほしい、という消費者の強い要望があった。
検討の結果、(1)の義務表示の対象食品は拡大されなかった。(2)については、加工工程後も組み換えられたDNAまたはこれによって生じたタンパク質が、広く認められた最新の検出技術によって検出できなかった場合のみ、「遺伝子組換えでない」と任意表示できることになった。
確かに日本の5%は、韓国の3%、豪州とニュージーランドの1%、欧州連合(EU)の0.9%に比して高かった。検出精度は日々上がっていくから、日本の意図しない混入に関する基準は世界で最も厳格なものになる(遺伝子組換え食品制度に関する検討会報告書 図表7)
新しい表示は、「遺伝子組換え原料使用」と「不分別」の義務表示と、不検出のときのみ可能になる「遺伝子組換えでない」の任意表示となると思われた。しかし、生産流通の段階で厳格に分別し、意図しない混入が5%未満であった時には、遺伝子組換え原料を避けたい消費者に応えるために何らかの表示をしたいという声が食品事業者からあがった。これまでの意図しない混入5%未満に該当する部分が、「遺伝子組換えでない」(不検出)と「分別生産流通管理済み」(検出はされるが5%未満)のふたつの表示方法に分かれたことになる(図2)。
消費者の受け止めは変わっているのか
このように厳格な表示がされていることになる遺伝子組換え食品だが、消費者はどのような捉え方をしているのだろうか。食品安全委員会は03年から、公募した食品安全モニターに対して毎年アンケートを行っている。
このアンケートが始まったころ、遺伝子組換え食品に不安を感じている人は7~8割だったが、10年以降は5割を切り、21年度は40.5%(N=415)だった。「食のリスクを感じるもの上位7位」を尋ねる質問においても、遺伝子組換え食品が登場したのは6位(64.7%)になった09年が最後で、その後は姿が見えない。
生協ではプライベートブランド(PB)として、不分別と表示されているドレッシング(コーン油、ダイズ油)、飲料(トウモロコシのデンプンからつくる甘味料)など、品目が拡大している。これらは価格も安いこともあり、消費者に受け入れられているようだ。
遺伝子組換え表示制度に関する検討会開催時に行われたアンケート「遺伝子組換え食品に関する消費者意向調査」(16年度実施N=1万648)では、遺伝子組換え食品を「避けている」と「できるだけ避けている」と回答した人の合計は83%であった。また、安全性審査の認知度についての回答をみると、「知っている」18.1%、「聞いたことがある」43.2%と低く、遺伝子組換え食品や食品表示のしくみをめぐるリスクコミュニケーションはまだまだであることも否めない。