うつ病対策を取材していると発達障害との関連に突き当たる。うつ病は後天性だが発達障害は先天性であり全く違う。しかし、症状として似ている点もあり、発達障害なのにうつ病と診断されているケースもあると精神科医から聞いた。共通していえるのは、うつ病で悩む人も発達障害の人も社会・会社が適切な対応をとることで活躍する場が広がるということだ。そこで今回は、発達障害者の支援策を事業化したKaien(カイエン)の鈴木慶太・代表取締役に発達障害と企業・社会が取り組むべき問題などについて聞いた。
鈴木慶太(すずき・けいた)
1977年埼玉県出身。東京大学経済学部卒業。日本放送協会(NHK)入社。鹿児島、仙台放送局に勤務しアナウンサーとして報道・制作を担当。退職後、2007年からノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院へ留学。経営学修士。渡米直前に長男が発達障害であることを知る。大学院在学中に発達障害の能力を活かしたビジネスモデルを研究。帰国後の2009年9月、発達障害者の就労支援などを行うKaienを創業。
社会性が苦手な発達障害
――書店に行くと、うつ病関連書と同じぐらい発達障害の本が並んでいる。それだけ世の中の関心事になっているのだと思う。うつ病の発症率は5%、発達障害は全人口の2~6%を占めているといわれていますが、一般的にうつ病に比べ発達障害の認知度は低いように思えてならない。発達障害といっても専門家によって多様な定義がなされ、いくつかに分類もされています。発達障害とはどのようなものなのか教えてください。
鈴木:発達障害は先天性であり治るものではありません。遺伝子が絡んでいることは間違いないのですが、どの遺伝子なのかは複雑で、同じ遺伝子を持っていても発症するかどうか、発症しても強弱は人によりマチマチです。社会生活を上手に送れないという意味では、うつと症状は似ていますが、先天的であることが大きな違いです。
先天的に何が違うのかというと脳です。このため、一般的な人と情報処理の仕方が異なっています。発達障害をもつ人は、虹色のように段階的に存在しています。発達障害は、社会との関係性における症状であり、置かれた場(時)によって症状が出たり出なかったりします。つまり、発達障害の人が苦手な全体感を見る、その場の空気を読む、相手の意を汲んで理解していく力、同時に違うことを処理するなど、これらを求める社会とどのように関わっているのかで診断されるかどうかが決まっていく。そうしたコミュニケーション能力への要求度が社会の各組織・場面で高まっているのが現在の日本です。それは、今までは目立たなかった人が発達障害と診断されるケースが増えていくことにつながります。