ドコモへの依存が危ういことに気づいていても、右肩上がりだった日本市場と、半ば思考を停止できる心地よい関係に甘んじ、事業構造の転換が遅れたことが今回の状況を招いた最大の要因だろう。10社以上あった日本の携帯電話メーカーはいまや6陣営に減ったが、「3陣営くらいで十分」(総務省幹部)との声もあり、一段の再編は必至だ。
「スマートフォンの定額制は大半のユーザーにとって割高なのではないか」。3月下旬に総務省が公表した「ブロードバンド普及促進のための公正競争レビュー制度に基づく検証結果」では、こんな視点が提示された。スマホ定額プランの上限は、実際にユーザーが使用する通信料よりも3倍ほど高い水準に設定されている。消費者への利益還元要請が強まれば、通信会社は調達コストを抑えようとする。生産規模が桁違いに小さい日本メーカーは、さらに追い込まれるだろう。
NECやパナソニックにとって携帯電話事業を存続させる意義は薄れている。ドコモとの関係や技術の保持という名目がなくなれば、いつまでも抱えておく必要もない。ITの世界で唯一、日本企業が世界をリードできると思われていた携帯電話。しかしスマホへの移行でコモディティー化すると、日本企業がたちまち存在感を発揮できなくなるというのは、テレビなど他のデジタル製品と同じ構図。日本の製造業の根源的課題が、今回も積み残る。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。