2024年5月13日(月)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年4月8日

 さらに、個人消費関連の重要な指標である新車販売も、3月には前月比で3ヶ月ぶりの増加となる年率換算986万台となった。4月3日に発表された雇用統計も、悪化はしたものの数字自体は市場予想の範囲に収まるものであった(関連情報・・・前回記事「日本経済にも少なからず明るい兆し」)。

 オバマ大統領への後押しはまだある。4月初めにロンドンで開催された金融サミットで、主要国が財政措置による景気下支えと保護主義の阻止で一致したことである。もちろん、参加国それぞれが異なる立場にあって、今回の金融サミットが良くも悪くもサプライズがない会合であったことは事実であろう。それでも、金融危機に主要国が一致団結して立ち向かう姿勢が見えた意味はあり、これもオバマ大統領にとっては支援材料となっている。

ハネムーン後に迫られる選択

 米国経済の不安材料は山積している。明るい経済指標がいくつか出ているとしても、大幅な景気悪化に歯止めがかかりつつあるように見えるというだけで、良い指標が出てきたわけではない。やはり、追い風があるとしても、僥倖的な追い風だけでは早期に金融危機を終息させ、経済を回復させるのは容易ではない。

 オバマ大統領が高い支持率を維持していくためには、今後とも果断な政策対応が必要なことは論を待たないが、対応の前提として必要となるのがその政治経済外交姿勢の明確化であろう。米国経済だけを見ても、いままで成長牽引役であった金融部門が総崩れになるような状況にくわえて、財政制約やドル基軸通貨体制の揺らぎ、そして回復への道筋が見えない経済金融情勢など、大きな枠組みの見直しなしには修復しきれないような問題を抱えている。

 その中では、オバマ大統領がいくら慎重でバランスの取れた舵取りが出来るとしても、足元の危機対応に終始するばかりでは、いずれ国民に愛想を尽かされる可能性がある。そうであれば、オバマ大統領にとって、選挙中言い続けてきた「チェンジ」の具現化を図ることが重要となろう。どのような世界を構築して米国や世界をリードしていくかについて、オバマ大統領のビジョンが明確になれば、そこに向かう方策も明確になる。

 いずれにしろ、大統領と世論の100日ハネムーンの終了は、いずれオバマ大統領を、いままでの米国経済の成長メカニズム、金融システム、市場メカニズム、通貨制度等を大胆に変革してでも新たなステージを狙っていくのか、それとも、いままでの枠組みを守ることに全力を傾注しつづけるのか、の選択に行き着かせる道のりの幕開けとなろう。しかも、「チェンジ」を標榜するからには、新たな方向に舵を切る可能性も十分ある。


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