日本企業の主要な投資先であるASEANは、外国直接投資(FDI)の受け手のイメージが一般に強い。だが、自国経済の成長に伴い、資金、技術、ノウハウ、人的資源を蓄積した地元企業が海外事業を近年推進しており、ASEANは出し手としての側面も強めている。事実、ASEAN諸国(全10カ国合計)の対内FDIに対する対外FDIの比率は、残高ベースで1990年代の平均26%から2010年代は同55%へ2倍超に上昇した。ASEAN全10カ国の対外FDI残高の合計は世界の国別順位で9位に相当する規模へ膨らんでおり、日本のそれに近づきつつある。地元企業の国際化は、シンガポール、タイ、マレーシアで先行し、フィリピンやインドネシアでも目立ち出している。先行3カ国は小規模な国内市場、少子高齢化の進展、政府の支援などの要因も相まって、とりわけ10年代以降、地元企業の越境経営に弾みが付いている。
FDIの担い手として
頭角を現す
10年代から国際化が加速したASEAN企業は、「新興多国籍企業」といわれたBRICs企業よりも後発組の「新・新興多国籍企業」と呼び得る存在だ。巨額のFDIを誘致し、それを梃子に高成長を実現したASEAN諸国であるが、今や「新・新興多国籍企業」を自ら輩出し、FDIの担い手として頭角を現している。この変化は、ASEAN経済の今を特徴づける注目点の一つであると筆者はみている。
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