8月14日付シンガポールの大手Straits Times紙にて、タイのKavi Chongkittavorn(Nation Media Group記者)が、日中双方の急速なASEAN接近を説明しつつ、ASEAN各国はこれに揺さぶられず、ASEAN内の団結を維持すべきである、と述べています。
すなわち、今日のASEANに対する日中両国のアプローチはかつてないほどだが、これは大きな不安と政策的ジレンマを引き起こす。既にこの状況は、ASEANの一体性に楔を打ち込んでおり、東アジアの経済協力と繁栄に長期的な影響を及ぼす可能性もある。
米中間の競合関係は、その地理的な乖離も相まって、なんとか凌ぐことができるかもしれないが、日中間の紛争ではASEANはその狭間に置かれてしまう。日中両国は、単にASEANの隣国であるだけでなく、数ある地域枠組みの主要アクターであり、投資や貿易に影響を及ぼす。
この半年間で3回行われた安倍首相のASEAN訪問は、日本とASEANの関係性を、従来の経済関係のみならず、包括的な戦略関係へと移行させたいという日本の願望を端的に表すものである。これは、日本がASEAN各国に対し -とりわけ海洋安全保障問題の文脈において- 強い安全保障関係を築こうとしていることを意味する。
日本とASEANの二国間関係に変化を及ぼしている原因は、中国の台頭と米中の経済的、戦略的な力学である。これまでの日本の安全保障協力は、ARFに限られており、なおかつ非伝統的安全保障の分野が主であった。
こうした日本の動きに対し、ASEAN各国が異なる反応を示したのは自然なことである。フィリピンとベトナムは、海洋安全保障協力の文脈において日本の動きを歓迎したが、タイは対中関係を考慮して、これを憂慮した。現に、本年1月に行われた安倍首相のタイ訪問では、海洋安全保障協力の問題を公式のアジェンダとしては取り上げていない。