シンガポールの東南アジア研究所上席研究員のイアン・ストーリー(Ian Storey)が、1月22付WSJの論説で、南シナ海問題につきASEANで見解が一致することは望めず、本年の議長国ブルネイのもとでも進展は期待できない、と述べています。
すなわち、ASEANの議長国を今年務めるブルネイには同情を禁じ得ない。中国政府の強硬策は、ここ数年、南シナ海の領土問題をめぐって利害関係が必ずしも一致していないASEAN加盟国間に、分裂を生じさせている。その結果、ASEANの議長国を務めるのは、従来よりも困難なこととなった。
中国は増大する経済力と軍事力をもとに、隣国に対して中国の要求を呑むよう強要し、既に、昨年の議長国カンボジアは、これに屈している。中国は、ASEANを、地域における「中心的存在」と認め、今後もASEANを評価していくであろうが、こと南シナ海問題に関する限り、中国の対ASEAN戦略は、分裂させ支配する、分割統治である。
ASEAN関連のフォーラムにおいて、領有権問題が表面的にしか取り上げられず、ASEANが、南シナ海の問題のような重要な安全保障に関する問題に対処できないとなれば、米国はASEANに対する関心を失い、中国がASEANの主たる対話国となってしまうかもしれない。
南シナ海における紛争は不可避というわけではなく、海上における偶発的な衝突を回避することで、2013年についても現状を維持することができようが、今年の議長国ブルネイのもとでも、大きな前進を期待するべきではない、と言っています。
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南シナ海問題をめぐる中国とASEANの関係は、論説の指摘する通りです。中国によるASEANに対する分割統治の有効性に大きな変化があるとすれば、それは、ASEANが全会一致の原則を変える場合でしょう。しかし、全会一致の原則変更の問題は、以前からASEANで議論されてきていますが、どのような多数決(3分の2か、4分の3かなど)にするかといったことなど、核心的な事項について、詰めた議論をするに至っていません。