日の丸太陽電池復興に対する悲観論(1)
欧米中の専業ベンチャーにはもはやかなわない。
独・Qセルズは、01年に太陽電池の生産を開始し、政府の補助政策を追い風にシェアを伸ばすと同時に、生産工場の多くを東ドイツに置き、格差が指摘される東側の雇用を創出してきました。技術開発力にも定評があり、同社と取引のある日本の関連メーカーからは「あらゆる技術に資金や人材を投入しており、新技術の研究開発力は日本勢以上」との声が聞こえてきます。
中・サンテックは、豪州国籍をもつ太陽電池研究者、施正栄(シ・ジェンロン)氏が01年、政府に請われる形で中国に設立したベンチャー企業です。05年にはニューヨーク証券取引所に株式上場。中国の安い労働力と、株式市場からの機動的な資金調達を組み合わせ、短期間で大きく成長しました。06年には太陽電池関連メーカーのMSK(東京・新宿区)を買収して、その生産技術を手に入れました。今年からは本格的に日本にも進出していますが、「価格ではなく品質で勝負する」(同社広報)というだけあって、実際に流通サイドから高い評価を受けています。
米国でも新勢力が台頭しています。薄膜型太陽電池でカドミウム・テルルを原料とするファーストソーラーは、コスト競争力で世界第4位に躍りでました。1ワット当たりのコストで98セント(約97円)を達成しています。日本でも一部のトップメーカーが、1ワット100円を達成していますが、設立後10年で同じレベルまできたことになります。
金融危機で少し様相が変わったものの、世界中の余剰資金が数少ない成長マーケットである太陽電池に期待しています。投資マネーを旺盛に吸収し、専業ベンチャーならではの経営判断の速さで一気に突き進むこれらの新興勢を見れば、いわゆる「総合家電」で総花的経営を続ける日本勢に勝ち目はない、との見方がでてくるわけです。
日の丸太陽電池復興に対する悲観論(2)
太陽電池の技術はもはやコモディティー化した
これら新興メーカーをサポートする存在が、太陽電池セルの製造装置メーカーです。太陽電池の製造はシリコンを使うため、半導体と技術的に近いところがあります。さらに薄膜型は大きなガラス基板を使うため、薄型テレビの製造にも似ています。そのため、半導体や薄型テレビの製造装置メーカーが太陽電池セルの製造装置を販売しはじめています。