今年7月にロシアがオホーツク海や中露国境付近で行った緊急抜き打ち軍事演習は、16万人の兵士が参加するというソ連解体後、最大規模のものであった。その意図を分析すると、「中国向け」という見方も浮上する。11月1・2日に日露初の外務・防衛閣僚会合(2プラス2)が開催される。東アジアへの関心を高めるロシアの本音はどこにあるのか─。
11月1、2日に広範囲な安全保障問題に関してハイレベルの戦略協議を行う日露外務・防衛閣僚会合(いわゆる「2プラス2」)の第1回が実施される。2013年4月29日に実現した10年ぶりの首相公式訪露により、立ち上げが合意されたもので、安全保障分野での連携という日露関係の新たな幕開けとなった。
日本は、同盟国の米国とは1960年から、日本を「アジアの最緊密パートナー」と呼ぶオーストラリアとは07年から実施しており、ロシアが3カ国目となる。他方、ロシアが行う「2プラス2」は、米英仏伊に次いで日本が5カ国目となり、アジアでは最初の相手国となる。
これは、日露がお互いを戦略的パートナーと見なし、両国関係の戦略的レベルを大きく引き上げることを意味し、中国の台頭を見据えて急接近しているとの印象を第3国に与えることになった。領土問題を抱え、平和条約も存在しない日露間において、なぜ今「2プラス2」なのか。
11年9月に当時のプーチン首相が大統領選挙に出馬表明を行って以降、ロシアは、外相会談や首脳会談において日本との安全保障協力をしきりに求めるようになっている。ロシアの戦略的な関心が欧州からアジアへシフトする中、経済成長に伴う国力の増大により対等性が失われつつある中国との戦略協調を有利に展開させるため、中国と距離を置く日本や米国、ベトナムやインドなどとの戦略連携を強めざるを得ないからだ。
中国への牽制姿勢も顕在化しつつある。11年10月に中国政府職員によるスパイ事件が明らかにされたが、中露間では前代未聞の出来事であった。最近では、軍高官などからも率直な対中不信が聞かれるようになり、本年7月には著名なロシア軍事専門家が中国軍がロシア極東に電撃侵攻して帝政ロシア時代に奪われた固有領土を奪還するという軍事シナリオを公表した。中国批判はもはや政治的タブーではない。世論調査でも、「中国の拡張主義がロシアへの脅威」と考える人は、98年の3%から13年には31%に増えている。
こうなると中露が軍事的に足並みを揃えて日米を牽制するという構図は、もはや一面的である。昨年から開始された中露合同海軍演習「海上連携」も、立ち上がりの段階から演習内容や実施場所をめぐって調整が難航し、本年7月5日から実施された第2回目も、直前にモスクワで開かれた中露参謀総長会談においてようやく最終合意が達成された。