2024年7月16日(火)

ヒットメーカーの舞台裏

2013年10月15日

 もみ玉は従来も「前後」「左右」「上下」という複雑な動きをしてきた。藤代はこうした「3D」(3次元)の動きに、「繊細な動作時間の制御」を加えることで「4D」によるマッサージと概念づけた。

「ヒトの手」を上回るため
 「カンジニアリング」を磨く

 繊細な動作時間の制御とは、従来の「ここの部位のもみは1分間」という平板な時間制御だけでなく、身体のある部位を一定時間強く押さえて、速やかに力を抜くといったようなメリハリをつけた制御のことだ。藤代は、「プロのマッサージ師のように、緩急のある絶妙な力加減の再現をめざした」という。

 顧客からの反響では、この4D機能が高く評価されている。また、肩甲骨のラインをもみ玉が検知したうえで周囲をなぞってマッサージする「肩甲骨ライン」や、同様に肩の上部から首の付け根に至る部分を検知して、もみほぐす「肩上押し」などの新動作も導入している。

 マッサージチェアは体感商品であるため、開発ではもみ玉やエアーによる作動を、いかにマッサージ師の施術に近づけるように制御するかがポイントとなる。実際の作業は、藤代のように制御の味付けをする人と、マイコンにプログラムを書き込む人がペアになって進める。たとえばもみ玉の位置や圧力の強さ、加圧時間などを藤代が試作チェアで体感しながらプログラミングしていく。

 プログラムはデジタルの世界だが、作業の際は藤代が「もう少し強く」といったアナログの表現で微調整していく。藤代は「エンジニアリングではなく、いわば“カンジニアリング”です」と笑う。もっとも、この機種の場合でプログラミングには、3カ月余りを要したという。根気と体力が求められ「もみ返しによって身体が痛くなる」ことも少なくないのである。

 藤代はカンジニアリングの技量を高めるため、営業部門からあがってくる顧客の声を大切にすると同時に、熟練マッサージ師の施術を参考にしている。販売の現場は顧客との対話から、「多くの改良点が提供される貴重な情報源」という。マッサージ師については、技量の高いとされる人を年間4~5人は訪ね、開発する機器の制御の参考にする。今回の「極メカ4D」にも、そうした長年の蓄積が生かされた。


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