2024年5月20日(月)

Wedge REPORT

2023年11月8日

 23年6月16日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」では、「教師が安心して本務に集中し、志気高く誇りを持ってこどもに向き合うことができるよう」、「働き方改革の更なる加速化、処遇改善」等を一体的に進めるため、「慣習にとらわれない廃止等を含む学校・教師が担う業務の適正化等を推進する」という文言が本文に入った。やっと学校が本来の姿を取り戻すべく、その断捨離を決行する土壌が整いつつあると言えよう。

 しかし、上述したように慣習的に学校を利用し、業務を増大してきたのはまさしく政治であり行政である。まずは自らそのことを自覚し、学校の断捨離においてリーダーシップを発揮すべきである。

学校側がすべきこと

 ただ、学校自体に問題がないわけではない。

 筆者は17年に校長になってからずっと部活動改革に本格的に取り組んできた。要は部活動のアウトソーシングだが、勇気を伴う断捨離の一つと言えよう。

 その理由は明白である。少子化問題も顕在化してきた上に、学校が教育活動を行いながら部活動を担うというシステムが既に破綻していたからである。

 直近の22年度に行われた教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)によれば、国の指針で定める月45時間を超える残業をしていた教員は、中学校では77.1%と8割に近い。この調査は8月、10月、11月に行われているが、おそらく5月、6月、9月などの繁忙期を加えればさらに増えるだろう。

 そして、その内訳でもっとも多いのは中学校ではもちろん部活動指導である。したがって、少なくとも中学校では部活動にメスをいれなければ働き方改革は不可能と言える。

 しかし、部活動をここまで肥大化させてきた責任の一端は学校側にもある。ある時、市教育行政と校長会の各部会代表者とが部活動の基本方針について話し合った。中体連会長を務める筆者が朝練をやめることや部活動をアウトソーシングすることを主張した際、出席した多くの校長が反対であった。

 部活動の教育的意義については誰もが認めるところだが、そもそも学校には部活動をやらなければならない法的義務はない。いつの間にか学校は子ども達のためという美名の元に、部活動を抱え込み、そして手放せなくなってしまったのだ。

 しかし、筆者が部活動改革に関わっているある自治体の教職員アンケートでは、約9割の教職員が地域移行を望んでいる。いま、部活動のアウトソーシングを学校自らが進めなければ未来はないだろう。

 いま、学校が正常に機能しているとは言い難い。この状況を打開するためには、政府も言うように教員が自信と誇りを持って教壇に立てるようにすることが何より重要だ。

 本来学校の業務ではない諸々のことを政治や行政の都合で押しつけることをやめ、学校は積極的に断捨離に取り組むことによって、教師が子ども達と希望をもって共に未来を語り合う学校を取り戻さなければならない。

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