2024年5月12日(日)

Wedge2023年11月号特集(日本の教育が危ない)

2023年11月2日

(イラストレーション・阿部伸二)

VOICE1
「国は『ミニマムリスト』を提示せよ」

 多くの中学校では8時15分が勤務開始だが、朝7時30分から8時までは部活動の朝練があり、勤務開始の1時間前に学校に来ている教員が多い。16時に「帰りの会」は終わるが18時30分前後まで部活動がある。授業準備をするとしたら18時30分以降で、20~21時まで行うことになるが、それを一切せずに帰宅する教員もいる。

 プログラミング教育や金融教育など、やらなければいけないことばかりが増えているし、やってもやらなくても給与は同じ。一生懸命子どものために頑張ろうと身銭をきったり時間を費やしたりする教員が現場を牽引しても、大半の教員は日々今まで通りに仕事をすることに精いっぱいで、ついていけない。

 学習指導要領では「探究的な学び」が強調されているが、今のままでは〝絵に描いた餅〟になる。理想論を掲げることは重要だし、子どもの将来のために応えたいという現場の矜持もあるが、多くの教員には時間も余裕もポテンシャルもない。文部科学省には教員が最低限やらなければいけないことを示す「ミニマムリスト」を提示し、教員の「幹」となる部分を明らかにしてほしい。それをせずに足し算や掛け算で新たな施策を行うようでは、現場の不信感は高まる一方だ。

 少子化で学校の数は10年後に約半分になることが予想されている。地方の学校は統廃合が進んでおり、こうした中で教員を増やすのは難しいのではないかと感じる。実際、正規の教員の採用は抑制されており、契約期間が短期の臨時採用の職員で教員不足の〝穴埋め〟をしているが、授業力が乏しければ積み上げもない。現場ではトラブルが増え、教員の仕事はかえって増えるという悪循環が始まっている。

 少子化は30~40年前から分かっていたことで、長期スパンで人材育成・人員配置をすべきだったはずだが……。行政が場当たり的な教育政策を続ける中でも、現場の奮闘で何とか踏ん張ってきたが、今は末期の状態だ。

VOICE2
「教員を責める資格はない」

 本来教員が担うべきではない業務まで抱えている。特に、地方には特有の事情がある。夏休みには奉仕作業や夏祭りなどのさまざまな地域のイベントがあり、教員はその準備や当日の進行・司会、片付けなどに駆り出されている。


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