2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2023年10月23日

 「中学受験の塾代だけで500万円。いったい教育費はいくらかかるのでしょうか。私は最初から、子どもを産むなら一人と決めていました」

 都内に住む佐藤恵美さん(仮名、40代後半)は、そう断言する。昨年度の中学受験で悠太君(仮名)が合格を果たしたが、今後も多額の教育費負担が続くと覚悟している。

(Hakase_/gettyimages)

 難関中学校の受験に強いとされる塾に入ると、年間に100万円前後の塾代がかかる。多くの小学生が3年生か4年生から塾通いを始める。学年が上がるにつれ受ける授業のコマ数が増え、夏期講習、冬期講習などの費用もかさんでいく。

 Wedge2023年11月号の特集「日本の教育が危ない」でも、中学受験で〝塾のための塾〟へ通い、塾代の〝課金地獄〟に陥る状況ついて執筆しているが、悠太君も6年生の時は約130万円の塾代に加えて家庭教師をつけるなど、小学4~6年の3年間にかかった費用は合計で500万円に上った。

 ちなみに、日本の平均年収は458万円(2022年実績、国税庁)。少なくないケースで、日本の平均年収を超える金額が中学受験の塾代に消えている。

「1分も無駄にはできない」

 そして、子どもたちの日々のスケジュールは過密だ。悠太君の場合、6年生の7月までは火曜、木曜、土曜に塾に通った。夏休みは夏期講習を受け、9月からは日曜の授業を追加。平日の塾は16時半から21時、土曜は14時半から19時まで。日曜は弁当を持たせて、8時から20時まで塾で勉強だ。

 塾がない時も勉強の日々。16時前に帰宅してから、ひたすら塾の宿題をこなす。曜日ごとに大量の宿題が出るため23時まで机に向かうのだ。「学校の宿題をする時間なんて1分もない」と、恵美さんが代わりに学校の宿題をした。悠太君は睡眠不足で学校に遅刻したり、休むこともあった。

 「1分も無駄にはできない」と、恵美さんは悠太君の小学校の授業が終わる頃を見計らって自転車で迎えに行き、帰宅後におやつを食べさせ塾に送り迎えした。塾は悠太君一人で歩いていくこともできる距離だったが、「その時間があるなら勉強させるか、休憩させたい」。

 志望校は部活を中心に考えて実際に学校を見学し、教員がフレンドリーな雰囲気の良い学校を目指した。「中学は好きなスポーツの部活が強く、塾に行かなくても学校で大学受験の勉強ができるところが良い」と考え、恵美さんは、悠太君のモチベーションを上げるためにも家庭教師をつけ、日々、「ケーキを買ってくるから頑張ってね」「コンビニに行くから、その間は頑張って」と発破をかけた。


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