川崎市内のある公立小学校で、プールの注水を誤って5日間し続けてプール約6杯分の水を流出させた事故が発生した。市は校長および教諭の過失によるものとして、発生した損害額約190万円の内、約95万円を関係職員に損害賠償請求した。NHK横浜放送局によれば、その後、この件について市や教育委員会にはおよそ600件の意見が寄せられるなど少なくない波紋を広げた。
寄せられた意見には、市の対応は当然の措置だ、といった賛同の声もあるものの、多くは「職員のミスを個人に弁償させるとかブラックすぎる」「残業代もロクに支払われないのに、賠償金はキッチリ取られるのか」といった市の対応を強く批判するものだった。
これらの声について、市は「個人の賠償責任について慎重に判断した結果であり、批判は受け止めるが、適正な判断」としている。教員の過重労働が問題になっているとは言え、今の時代では請求をしなければ住民監査請求や訴訟を受ける可能性もあることから、自治体は難しい判断を迫られているのも事実だろう。
ただ、見解を問われた福田紀彦市長が「かわいそう、教員不足になるというのと責任は別の話」と述べたことは火に油を注いだ結果となったようだ。同校では、保護者らが「先生に心配事があって仕事に打ち込めないのは困る」との思いで賠償を補塡(ほてん)する寄付を募るという事態に発展し、計67万円超が集まったという。さらにその後教職員らで作る団体が賠償請求の取り下げを求めて、インターネット上で1万7000筆の署名を集め、市と教育委員会に提出している。
本当に払うべきだったのか
法的にはどうなのか。市の報道発表を見ると、今回の賠償請求は「校長及び教諭の過失によるものであると判断し、民法第709条の規定に基づき、両名に対し損害額の5割の950,312円を請求」したとある。
あるサイトでは「教員は支払わなければならないのか?」というタイトルで専門の弁護士の見解を載せる企画まで登場している。それによると要はケースバイケースということらしい。それはともかく、そもそも教育委員会の決定に教員が逆らえるはずもない。