2024年12月18日(水)

バイデンのアメリカ

2023年10月10日

 教育は国ではなく自治体と個人に任せるべきだ――。米共和党大統領候補たちが、2024年大統領選に向け、一斉に「教育省廃止」論を唱え始めている。しかし、先進国中、異例の措置であるだけでなく、国内的に反対も多く、仮に政権奪取できたとしても、実現への道のりは果てしなく遠い。

(Inside Creative House/gettyimages)

「教育は政府の職員が口出すべきではない」

 米下院「初等教育」小委員会委員長を務める共和党のアーロン・ビーン議員(フロリダ州選出)は去る8月、同僚議員らとともに、教育省職員・公職者の採用凍結を目的とした抜本的教育関連法案を提出した。

 同法案には、教育省内における①いかなる部署への人材登用を停止する、②いかなる新たなポストの設置を禁止する、③今後の職員・公職者採用財源を凍結する――ことが具体的に盛り込まれている。ビーン議員は記者会見で「子供たちの教育面での向上には本来、親たちが主たる役割を担うべきであり、選挙で選ばれてもいない政府の職員たちが口出しすべきではない」「教育政策は国ではなく、地方自治体に任せるべきだ」などとその意義を強調した。

 これと前後して、来年大統領選に出馬表明している共和党候補たちも、あいついで「教育省廃止」論を展開し始めた。

 最も早くから、教育省をやり玉に上げてきたのが、トランプ氏だ。

 同氏は、2016年大統領選出馬表明後の記者会見などを通じ、「腐敗しきった教育制度を根本的に改革する」「教育は国ではなく、地方に委ねるべきだ」「生徒一人当たりの国の出費は世界1位だが、わが国の教育ランキングは途上国並みの世界26位だ」「いずれ教育省は廃止する」などと過激発言を繰り返してきた。

 そして当選後の17年には、具体的に教育省を局に格下げして労働省の傘下に置く構想を発表したものの、野党民主党議会の反対で実現できなかった。

 しかし、同氏は24年大統領選への再出馬表明後も、従来の主張と立場を後退させるどころか、エスカレートさせている。

 共和党指名獲得レースで2位につけているロン・デサンティス・フロリダ州知事も、この点では、トランプ氏に負けていない。

 同性愛主義、白人逆差別、マリファナ容認といった“woke culture”との戦いを選挙スローガンに掲げてきたデサンティス知事は、「こうした間違った社会風潮の根幹は教育にある」との持論に立ち、去る8月、保守系TV「Fox News」とのインタビュー番組で、以下のように述べた:

 「私は大統領就任後、真っ先に教育省を撤廃する。同時に、商務省、エネルギー省、内国歳入庁(IRS)にも大ナタを振るい、巨大政府をスモールガバメントに変える」

 「教育省撤廃が民主党議会の反対で実現できなかったとしても、国が初等教育カリキュラムを決めたり、口出しすることは絶対許さない」

 「生徒の個性、能力より多様性、平等を重視する現在の教育システムがはびこっている限り、わが国の教育レベルは途上国並みにとどまり続けるであろう」


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