一時は景気後退入りが懸念された米国経済が堅調に推移している。しかし、「高インフレ」「失業」などをバイデン政権の失政ととらえ、2024大統領選の主要争点としてきた野党共和党の立場は複雑だ。
回復しつつある米国の景気
共和党はこれまで、次期大統領選に向け、物価高騰、犯罪増加、中南米不法移民増の「三つの矢」を民主党攻撃の基本戦略としてきた。このうち、最も重きを置いてきたのが、消費者を苦しめてきた物価高騰だった。
実際、昨年までは一時、ガソリン、食品、衣料品などの諸物価が過去40年ぶりとなる9%にまで上昇。それ以来、共和党は「Bidenomics(バイデンの経済政策)の破綻」と騒ぎ立て、攻勢を強めてきた。
ところが、今年春以来、インフレ率は先進国中最低となる3%台にまで落ちつきを見せ、失業率も4%以下にとどまると同時に、労働市場では求人難状態が続いている。
景気の重要な指標のひとつとされるミシガン大学調査による最新の「景況感指数」も、バイデン政権発足以来最も高くなっている。
さらに今後の経済見通しについては、議会予算局(CBO)、連邦準備制度理事会(FRB)のいずれの事務局も「懸念されてきた景気後退は回避され、ソフトランディング(軟着陸)の可能性が高い」との判断を示している。
もちろん、物価ひとつとっても、いぜん民主党にとって手放しで喜べる状況ではない。 たとえば、消費者が最も敏感に反応する自動車ガソリン価格は、トランプ前政権末期の2021年1月時点で1ガロン当たり2.39ドルだったのが、最近は3.60ドル台に高止まりしたままだ。
さらに、最新9月14日のニューヨーク原油先物市場では、テキサス産軽質油が一時、1バレル=90ドル台と、約10カ月ぶりの高値となり、再びガソリン価格への跳ね返りが懸念されている。この間、時間当たり賃金はわずかな伸びにとどまっているため、消費者はガソリン代を節約せざるを得ない状況が続いている。
「バイデン政権がいくら数字を並び立ててみたところで、平均的家庭の生活が圧迫されていることに変わりはなく、Bidenomicsの失敗は誰の目にも明らかだ」。ミッチ・マコーネル共和党上院院内総務は最近、こうコメントしているのもあながち的外れではない。