2024年6月22日(土)

バイデンのアメリカ

2023年9月19日

 このほか、トミー・タベルヴィル上院議員(アラバマ州選出)は、同法案審議では反対したものの、法案成立後、「わが州にかけがえのない資金が流れ込むことになったので素晴らしいことだ」として、成果を高く評価する談話を発表し、話題を広げた。

 これに対し、「共和党全国委員会」(RNC)や来年大統領選に出馬表明している共和党候補たちはいずれも従来同様、一連のバイデン経済政策を「大失政」として酷評し続けている。

 その一方で、穏健派の同党上院議員たちは「これら現政権下での成果は、バイデン大統領の得点稼ぎになることは確かだが、同時にわれわれのためにもなっている」と割り切った態度をとっており、バイデン政権の経済政策をめぐる共和党内での評価に亀裂もみられる。

 こうした状況を踏まえ、ビル・クリントン政権下で労働長官を務め、民主党の論客として知られるロバート・ライシュ・カリフォルニア大学バークレー校教授(公共政策)は先月、英紙「The Guardian」への寄稿文の中で、①「半導体」関連支援法により、過去1年間にハイテク工場建設件数は4倍に増加した、②「インフラ」法成立以来、何百憶ドルもの資金が道路建設、家庭用水システム近代化、インターネット通信インフラ拡充工事などのために各州自治体に流れ込んでいる、③昨年発表されたクリーンエネルギー関連施設の建設件数は過去7年間分にも相当する――などを指摘した上で「国民大多数を利することになるBidenomicsが今後も引き続き成果を収めることができるならば、民主党は来年選挙では、ホワイトハウスと議会のいずれにおいても勝利を収めることになるだろう」との楽観的見通しを述べている。

批判は政策からバイデン個人へ

 さらに共和党にとっての「不都合な現実」として指摘されるのが、上記のような好調な経済のほか、これまでバイデン攻撃のターゲットにしてきた「犯罪増」「不法移民増」の最近の状況だ。

 まず、米国内における犯罪については、コロナ危機発生後、一般市民の〝巣ごもり〟状態が続いたこともあり、窃盗、家宅侵入、殺傷事件などが急増し、昨年11月中間選挙の最大の争点のひとつにもなった。

 ところが、その後、バイデン政権が打ち出した警察捜査網の拡大・強化策などが功を奏し始めた結果、今年前半6カ月の殺人事件数は昨年同時期に比べ、9%減となった。殺人以外の犯罪も減り始めている。

 中南米からの移民問題についても、バイデン政権発足後、増加傾向が目立ち、共和党の恰好の攻撃材料となったが、その後、難民規制強化措置の徹底などにより、難民申請数、不法移民数ともに減り続け、今日に至っている。 

 こうしたことから、共和党としては、バイデン攻撃戦略の標的を、政策面から個人面にシフトすべきだとの指摘も党内で始めている。

 そこで、共和党の重鎮、マッカーシー下院議長は最近、バイデン大統領の次男ハンター・バイデン氏が銃不法所持などの容疑で起訴されたことに関連して、「腐敗したファミリー・ビジネスの一環」だとして、大統領弾劾審議起案に向け同僚議員たちへの働きかけに乗り出した。まさに〝窮余の一策〟というべきものだ。

 ところが、ドン・ベーコン(ネブラスカ州)、ブライアン・フィッツパトリック(ペンシルバニア州)、マイク・ローラー(ニューヨーク州)、ケン・バック(コロラド州)各下院議員らが「具体的証拠がない」「時期尚早」「たんなる政治ショー」といった冷ややかな反応を見せるなど、共和党としての足並みの乱れが露呈している。

 このため、議会メディア「The Hill」によると、ホワイトハウスは、マッカーシー下院議長らの動きに何ら動じる様子もなく、かえって「無駄な騒ぎをすればするほど、墓穴を掘る結果になる」などと警鐘を鳴らしているという。

 加えて共和党は、来年大統領選に向けて、最有力候補として自他ともに認めるトランプ氏があいつぐ不名誉な刑事裁判で被告席に立たされることで、今後世論のさらなる離反を招くことも考えられる。その一方で、トランプ氏が来年夏の全国共和党大会で最終的に同党候補に指名される可能性はますます高まりつつある。

 結局、同党が本選で民主党から政権奪還できるかどうかの最大の課題は、はたして〝トランプの呪縛〟から抜け出せるかどうかだろう。

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