2024年5月16日(木)

バイデンのアメリカ

2023年10月10日

 トランプ政権下で副大統領を務めたマイク・ペンス候補も同月、地元インディアナ州で開催された全国州議会サミットで、「連邦政府大改革構想」を発表。「州はワシントンDCの下部機関ではなく、州は連邦政府の一組織ではない」とした上で、「教育省廃止」を含む政府各省庁の大胆な再編・規模縮小に取り組む方針を明らかにした。

 このほか、ニッキー・ヘイリー前国連大使、ティム・スコット上院議員、投資家ビベック・ラマスワミ氏ら各候補も、一様に「教育省撤廃」を有権者向けの選挙スローガンに掲げており、全米各州の保守層の思想基盤を反映したものとなっている。

共和党が教育省を敵視する理由

 その教育省だが、他の先進諸国と比べても創設の歴史は浅く、独立省として正式に設置されたのは、カーター民主党政権下の1979年のことだった。

 それ以前は、内務省内の「教育局(Bureau of Education)」、独立した「教育庁(Agency of Education)」、そして、ニクソン共和党政権下では、保健・福祉分野の中に含めた「保健教育福祉省(Department of Health Education Welfare)」として存続してきた。

 独立後、教育省の公職者・職員数は、3000人から1万7000人規模の巨大組織となったが、カーター政権の跡を継いだレーガン共和党政権下では再び、省としての廃止論が再燃、結局、予算、人員面で大胆な削減が行われた経緯がある。

 歴代共和党政権が、ここまで連邦政府の教育省を敵視する背景には、今なお南部諸州に根強く残る独立主義、「小さな政府」信奉がある。

 その典型が、「子供の教育はわが家庭で」を旨とする「ホームスクール」の伝統だ。

 筆者は、滞米中の5年前、南部バージニア州ののどかな田園に邸宅を構え、この「ホームスクール」を忠実に実行してきたある家庭を取材したことがある。

 訪問当時、夫婦(ともに共和党支持者)は、高校1年の次女(15歳)、小学1年の三女(7歳)と4人暮らしで、長男、長女はともに大学進学で親元を離れていた。

 しかし、こども4人に共通していたのは、全員が小学校から高校まで、学校に行かず、基本的に自宅学習で通してきた点だ。使用される教材は言うまでもなく、すべて地元専門業者が作成したもので、「国定教科書」などのお世話になることは、一切ない。

 結婚前まで学校教師だったという母親は、算数、英語、理科、歴史、つづり方、図工などの基礎科目をつきっきりで指導。同時に教育専門業者とオンラインでつながったパソコン画面も補助教材にするほか、乗馬、バスケットボールなどの課外スポーツは近くの関連施設に通わせるといった徹底ぶりに驚かされた。

 そして「友達とは課外活動や教会、キャンプなどを通じて普通に付き合いがあり、何も不自由はありません。学校では、いじめや麻薬、暴力沙汰などの心配事が多く、自宅の方が勉強に集中できます」というのが、母親の言い分だった。


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