選挙制度については、ハメネイは、それを二重主権をもたらすものと呼び、最高指導者と民衆との間を割くものとしている。
核の問題については、イランに対する制裁は、核開発の前から始まったことを指摘して、もともと体制転覆が目的であると言っている。
ハメネイによれば、自由民主主義は、西側による侵略と支配の道具であり、資本主義には将来は無い。マルキシズムも、自由主義も、ナショナリズムも魅力を失い、イスラムだけがそれを持ち続けている。
ところが、ハメネイの発言に最近微妙な変化が出て来ている。
毎年イランの新年である春の初めにMashhadで演説をするが、その中で、米国との交渉について、楽観はしていないが、反対しないと初めて言った。そして、イランの唯一の要求は、平和目的のためのウラン濃縮の権利を認めてもらうことだ、と言っている。ハメネイにとって、アメリカは、悪魔のような敵国から、中東における戦争の失敗で苦しんでいる地域大国に変わっている。
米国は、ハメネイに対して、イスラム共和国の体制転覆を企図しているのでないことを明らかにすべきである。イランの核開発が平和目的であることを確かめて、ウラン濃縮の権利を認めるべきである。経済制裁は、イラン政府より、イラン民衆に犠牲を強いるので、やめた方が良い。そしてイラン政府は、長期的には、イスラム共和国を維持するためにも、自由選挙を認めなければならない。
オバマ政権は、米イラン関係を解決するために、ロード・マップを作成して、それを実施すべきだろう。それが容易でないことは知っている。しかし、今や、イラン国民がロウハニを選出したことで、アフマディネジャド時代は終わったのだから、この機会を逃すべきでは無い、と述べています。
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対イラン政策としては、楽観的、宥和的に過ぎるかもしれない内容の結論ですが、その前段階として、詳細なハメネイの経歴と言動の分析があり、ハメネイの人物像について、多々情報を提供してくれる貴重な論文です。
現実の政治分析の上で、この論文について何らかの注目すべき点があるとすれば、今年の春からハメネイの態度に微妙な変化が生じていると言う点だけですが、それが、ハメネイについてこれだけの豊富な知識を持っている専門家の指摘であるだけに、説得力があります。
ただ、それは、まだ微妙な変化に過ぎず、今後の西側世界とロウハニ新政権との接触によってその実態が次第に明らかになって行くものでしょう。
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