米ダートマス大学准教授のジェニファー・リンド(Jennifer Lind)とダリル・プレス(Daryl Press)が、National Interest誌ウェブサイトに9月18日付で掲載された論説で、今後の米中関係は、中国の経済成長が続くことを前提にすると、米国が60年続けてきた外交路線から外れるか、あるいは中国が極めて弱々しい外交を選択するかというあまりありそうにない場合を除き、米中の国家安全保障利害は衝突する、と論じています。
すなわち、21世紀の国際政治の最大の問題は、米中両国が上手くやっていくかどうかであるが、今後の米中関係は、米中の政策の相互作用により決まる。
中国は色々な戦略をとりうる。
極端なケースとして、中国は経済的には強いが軍事的には弱いままで、東アジアの秩序を変えようとしないことが考えられる。この場合、中国は隣国を安心させ、米との摩擦を最小化し、国内問題に集中しうる。この「豊かな国、弱い軍」戦略は、世界秩序維持責任は米に任せるという戦略である。
また、中国は地域大国になる戦略をとりうる。その内、順応戦略では、中国は東アジアで大国になるが、拡張主義にならず、米国を地域から追い出そうとはせず、大国として自分や地域での利益を守ることを目指すにとどめる。もっと自己主張的な戦略では、中国は、地域で支配的な国になることを目指す。長期的に中国はモンロー主義のアジア版を非公式に作り出そうとするであろう。そして、空軍・海軍力を強化し、米国を地域から追い出す外交を行い、米国の同盟網を打破しようとするであろう。
第三に、中国はグローバルな政治的、軍事強国になろうとする戦略をとりうる。グローバル戦略は、中国の世界での利益を守る温和なものでもありうるし、もっと現状変革的でもありうる。後者であれば、中国は、国際秩序を変え、米の影響を小さくしようとするだろう。
米中関係の将来は中国の出方のみにかかっているわけではなく、米国の政策にもよるが、米国は既に確立された大戦略を持っている。
冷戦後、米国は、「グローバル・リーダーシップ」、「覇権」などと呼ばれる戦略をとってきた。指導力を発揮し、世界的な同盟網で安定を推進するという戦略である。東アジアでは、米国は同盟国に安心を与え、敵を抑止しようとしてきた。