2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月21日

 軍事的にこれを効果的にするために、米はアジアで軍事的優位を保持する必要がある。同盟国は米が必要な時に圧倒的な軍事力を地域に持ってくることを期待している。しかし太平洋を越えて戦力展開をすることは困難になっている。国防省が中国の接近阻止(A2/AD)戦略を気にしているのはそのためであり、米軍は、A2/ADに対向するために、エア・シー・バトルを推進している。

 米国の戦略を与件とすると、中国が「豊かな国、弱い軍」という戦略を採用した場合のみ、米中衝突はなくなる。他の戦略を採用した場合、衝突があろう。しかし、中国がおとなしい戦略を採用することはありそうにない。中国のA2/AD戦略や第2列島線防衛論は、少なくとも中国は地域大国であろうとしていることを示す。

 米中両国がともに合理的な戦略を採用すれば衝突に至る、というのが基本的な問題である。もちろん中国で経済が失速したり、民主化が起こる可能性もあるが、中国経済が引き続き成長する場合、米国が対外戦略を変えるか、あるいは中国が極端におとなしい政策をとらない限り、米中の国家安全保障上の利害は衝突するだろう、と述べています。

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 論説の指摘は、的を射たものです。米国人の多くがこのような認識に至れば、日米関係の強化につながることになるでしょう。

 米国人は、時として、中国との間で何とか良い関係を作れるのではないかとの幻想や希望的観測にとらわれる傾向がありますが、この論説は、そういう傾向への解毒剤として意味があります。

 中国は富国強兵政策をとっており、軍事的に弱い、戦後日本のようなことを目指してはいません。

 相当の蓋然性で衝突が予見される状況では、平和は、核の惨禍に対する恐怖に加え、勢力均衡の維持を通じてのみ達成されることになります。従って軍事バランスが壊れないように、あるいは壊れていると認識されないように注意していくこと、および同盟関係を一層強固なものとしていくことが肝要です。

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