2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月24日

 9月25日付け米Diplomat誌にて、Julio Amador III米East-West Center客員研究員が、「力の網におけるASEAN」と題して、アジアで出来つつある国際秩序へのASEANの対処ぶりを解説・提言しています。

 すなわち、東南アジアでは、米中関係のあり方がASEANに直接影響を及ぼすが、ASEAN諸国は受け身になるのではなく、将来の地域秩序の形成に関与しようとしている。

 中国は、新しい大国関係、すなわち米国とほぼ平等な関係を求めている。これは東アジアで中国が優位性を持つことを意味する。日本の尖閣諸島領有を問題にし、フィリピンのスカボロー礁などを奪取し、ベトナムとの西沙諸島紛争を継続している。 

 東南アジアは中国と平和的・生産的な関係を有してきた。2002年には南シナ海での行動についての宣言も出来た。東南アジア諸国には地理的に中国と協力する以外の選択肢はない。

 ASEANは、中国を取り込むことに努めてきた。しかし、日本にかわり世界第2の経済大国となった中国は、大国として尊敬されることを期待している。中国は東南アジアの支配を当然と考えているが、地域諸国は自主性を保持することを望んでいる。中国を尊敬しているが、中国に服従する気はない。それで、ASEAN諸国は、中国との関与を他の域外諸国との関与でバランスしようとしている。

 東南アジア諸国にとり、米国の優位性は受け入れやすい。米国の航海の自由尊重、他国の小国支配防止、領土要求の欠如の3点がその理由である。また米国の政策決定過程の透明性やアジア重視を歓迎している。

 しかし、ASEANは米中いずれかを選ばなければならないようにはなりたくない。ASEANは中立で大国に対話の場を提供しようとしてきた。ARFなどがそうである。また、米国がアジアでのコミットメントから引き上げる可能性があるとの恐怖が常にある。南シナ海での中国の領土主張についても、ASEAN諸国は慎重に対応している。

 ASEANは一致して、中国に南シナ海での行動規範の交渉を求めてきた。

 ASEANは、地域的構造の中心であることを望み、米中間で微妙な姿勢をとり、かつ日本、ロシア、インドとの関与を推進している。ただ、ASEANは、外交政策の調整では強くない。脅威認識も各国で違う。それで議長国が調整の任に当たることになるが、外圧への抵抗力はその議長国の力による。2012年のカンボジアと今年のブルネイでは異なる。


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