2024年4月30日(火)

BBC News

2024年4月17日

ドナルド・トランプ前米大統領が不倫相手に「口止め料」を払ったことについて業務記録に虚偽記載をしたとされる事件の裁判で、有罪か無罪かを判断する陪審員を選ぶ手続きが15日にニューヨーク州地裁で始まった。大統領経験者が刑事被告人になるという前代未聞の裁判であるうえ、被告が評価の大きく分かれる人物なだけに、選任は難航し、数週間かかるとの見方が出ている。

トランプ前大統領は、2016年大統領選の最中に、かつて不倫関係にあったとされる元ポルノ映画スターのストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)氏に13万ドル(約2千万円)の「口止め料」を支払うよう、当時の顧問弁護士に指示し、これを隠すために業務記録に虚偽の記載をした罪に問われている

陪審員は全12人で、マンハッタン地区検察とトランプ前大統領の弁護団が、前大統領に対する思いを脇に置いて公正な裁判を行える人を市民の中から選ぶ。

裁判初日の15日は、マンハッタンのニューヨーク州地裁に呼ばれた陪審員候補96人のうち60人ほどが公平な立場に立てないと判事に告げ、数分で裁判所をあとにした。

500人近い候補者から選出か

注目度の高さから、この裁判の陪審員候補は500人近くに達する可能性があるとされる。マンハッタンと、隣接するルーズヴェルト島の住民から選ばれることになる。

ニューヨークの元検事らによると、陪審員の選任にはいくつかの段階があり、優に1週間以上は続く可能性があるという。

検察と弁護団は偏見を持つ陪審員を排除するため、候補者らが回答したアンケートの分析をしている。

候補者らは、どのニュースメディアを読んでいるか、どのポッドキャストを聴いているか、ソーシャルメディアでトランプ前大統領をフォローしているか、前大統領の集会に参加したことがあるか――などを聞かれた。

また、左右の過激グループを支持しているかや、自分をその一員だと考えるかも問われた。特に、「Qアノン運動」、「プラウド・ボーイズ」、「オース・キーパーズ」、「スリー・パーセンターズ」、「ブーガルー・ボーイズ」、「アンティファ」との関わりについて聞かれた。

これら陪審員候補への質問は42項目にわたっている。

自分や家族・友人が犯罪の被害者になったことがあるか、あるとすればどの犯罪かを示せ、というものもある。この質問からは、裁判となっている今回の事件について、過去の経験から偏見を持っている可能性の有無を判断できる。

また、子どもの職業や、裁判に集中できなくなるような薬を服用していないかなど、より個人的な質問も含まれている。

検察側は、2020年の大統領選挙でジョー・バイデン大統領が正当に勝利しなかったと考える人を陪審員から除外すべきだとし、関連の質問を盛り込むよう主張した。だが、トランプ前大統領側がこれに反対し、その質問は含まれなかった。

裁判を取り仕切るホアン・マーシャン判事は2月、政治団体への所属だけを理由に陪審員候補を除外することはないと強調。「問題は陪審員が公平で、法律に沿った評決を出せるかどうかだ」と述べた。

一方、トランプ前大統領の弁護団は、与党・民主党支持者が多いマンハッタンでは公平な陪審は無理だと訴えている。

双方にとって重要な手続き

検察側と前大統領氏の弁護団の双方は、陪審員になってほしくない候補者について異議を申し立てることができる。

元マンハッタン地検検事だったダイアナ・フローレンス氏によると、双方はそれぞれ10人まで、特別な理由を示さずに陪審員候補者に反対できる。理由を明示しての反対は無制限に可能。

元マンハッタン地検検事だったジェレミー・サランド氏は、トランプ前大統領に対する見解を隠して裁判に参加しようとする人など、客観的に裁判に臨めない人を陪審員から排除するうえで、現在の選任手続きは極めて重要なものだと話した。

元ブルックリン地検検事だったジュリー・レンデルマン氏は、双方が専門家を雇って、陪審員候補者のソーシャルメディアへの投稿を調べ、思想性や偏見などを探るだろうと述べた。

注目度が高いニューヨークでの裁判で公平な市民を探すのは、これが初めてではない。

ハリウッドの大物映画プロデューサーだったハーヴィー・ワインスティーン受刑者の2020年の性的暴行をめぐる裁判では、陪審員の絞り込みに2週間近くかかった。

トランプ前大統領の公正な裁判を可能にする人を見つけるには、もっと時間がかかるかもしれないとレンデルマン氏は言う。

「私たちは人間なので、望んでもいないのに偏見が入り込むことがある」、「(陪審員の選任は)可能だろうが難しいだろう」。

(英語記事 Difficult hunt for 12 unbiased jurors in historic Trump trial

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ckr50pj8p9zo


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