2024年12月22日(日)

田部康喜のTV読本

2024年4月28日

 TBS「日曜劇場」の「アンチヒーロー」は、正義とはなんなのかをめぐる深遠なテーマを扱っているミステリーである。刑事裁判で次々に「無罪」を勝ち取る弁護士・明墨正樹(あきずみ・まさき)役に長谷川博己を配した傑作である。

明墨正樹弁護士(長谷川博己)の「正義」とは?(「アンチヒーロー」HPより)

 キャスティングがはまっている。明墨の事務所の若手弁護士役に先輩として紫ノ宮飛鳥(しのみや・あすか、堀田真由)、後輩には明墨の手腕に憧れて入所してきた赤峰柊斗(あかみね・しゅうと、北村匠海)。パラリーガルの白木凛(しらき・りん、大島優子)。

 “無罪請負”の明墨法律事務所に対抗する東京地検には検事正・伊達原泰輔(だてはら・たいすけ、野村萬斎)と検事に緑川歩佳(みどりかわ・あゆか、木村佳乃)の顔ぶれである。

状況証拠からは「クロ」の殺人事件

 Episode 1-接点-(4月14日)とEpisode 2-拒絶―(21日)は、2話完結で町工場の経営者・羽木朝雄(はねぎ・あさお、山本浩司)が、従業員の容疑者・緋山啓太(ひやま・けいた、岩田剛典)によって殺害された事件である。

 従業員の尾形仁史(一ノ瀬ワタル)がたまたま工場に忘れ物を取りに来た時に、残業していた緋山(岩田)と経営者の羽木が口論をしているところを聴き、緋山が「殺してやる!」といって、羽木が住む工場と隣接している母屋に向かった、と証言していた。

 従業員は母屋に入れないルールになっていた。検察側は、入り口付近で容疑者の緋山の指紋を発見していた。

 経営者の羽木の爪の先から容疑者の緋山の皮膚のDNAも発見されていた。

 犯行の決定的な証拠となる凶器と、返り血を浴びたと推定される緋山の作業衣という決定的な証拠を検察側は提出することができなかった。凶器のカナズチは公判中に工場からかなり離れた地点で発見されたが。

 東京地裁の第一審において結局、明墨弁護士(長谷川)と公判検事の姫野道哉(馬場徹)との論争のすえに、「無罪」となった。無罪につながった弁護側の“謎解き”については後述する。


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