何が何でも「無罪」を勝ち取る
「アンチヒーロー」の「アンチ」の意味が明らかにされる。
無罪判決が出た夜、明墨事務所の赤峰弁護士(北村匠海)が、容疑者だった緋山(岩田)の車の後をタクシーで追尾する。緋山がたどり着いた場所は、産業廃棄物の処分場。彼はこともなげに袋からだした作業衣を廃棄物のなかに投げ込む。犯行を裏付ける血のりがついた作業衣である。
赤峰(北村)は事務所で明墨(長谷川)を問い詰める。
「先生は最初から(緋山が)殺したことを知っていたんですか?先生の『正義』とはいったいなんなんですか?」
「『正義』か。例えば(犯人が)家族の命を奪うナイフを突きつけたとき、こちらには彼を殺すナイフを持っている。君はどうする?」
「殺します」
「殺害者と殺意を持っていても殺せなかった者。君に(これからの進路は)任せるよ。君が『正義』を貫く限り、私は自分の道を突き進む」
明墨正樹は“無罪請負人”の単純な正義の人ではない。容疑者が本当に無罪か有罪かどうかもかまわない。とにかくあらゆる手段をとって、「無罪」を勝ち取る。ここに「アンチ」の意味がある。
どう証拠を崩すか
容疑者の緋山(岩田)が逮捕される決定的な証言となった、同僚の尾形(一ノ瀬)の証言があまりにも整然としているのにまず疑問を抱く。工場に忘れたものとは、尾形によると眼鏡だという。しかし、彼は常日頃から眼鏡をかけている。
明墨は、競馬好きの尾形を監視して若手の赤峰に撮影させたり、当たり馬券をとったことを理由にして尾形を鉄道の高架下の居酒屋に誘ったりする。尾形の転職歴もかなりの数になることを調べあげる。
尾形は騒音のなかでは聞き取りにくい症状の持ち主だった。公判では工場の騒音のなかで人が話す録音を聞かせた上で、尾形の診断書も提出する。
被害者の爪に容疑者の緋山(岩田)のDNAがあったことを鑑定した法医学者の権威である、中島忠雄教授(谷田歩)の動向と、DNA判定に使用する検査室の使用状況を若手の弁護士とパラリーガルの白木(大島)らに、違法ギリギリで探らせる。