2024年5月2日(木)

BBC News

2024年4月19日

アメリカのドナルド・トランプ前大統領の歴史的な刑事裁判は18日、ニューヨーク州地裁で陪審員12人すべての選任を終えた。

トランプ前大統領は、2016年大統領選挙の投票日前に、かつて不倫関係にあったとされる元ポルノ映画スターのストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)氏に13万ドル(約2千万円)の「口止め料」を支払うよう、当時の顧問弁護士に指示し、これを隠すために業務記録に虚偽の記載をした罪に問われている。大統領経験者が刑事裁判の被告になるのは米史上初めて。

この日の法廷では、最後の陪審員を選び終わると、ホアン・マーシャン判事が「陪審員がそろった」と宣言した。男性7人、女性5人という構成となった。

陪審員の選任には2週間ほどかかるとの見方もあったが、トランプ前大統領側の弁護団が反対機会を使い尽くしたため、その後の手続きは速やかに進んだ。

早ければ週明け22日にも冒頭陳述がある。

トランプ前大統領はこの日夕、裁判所を後にする際に、自身に対する起訴を批判するメディア記事を多数見せながら、「とても不公平で、とても悪いことだ」と述べた。

また、「このいかさまに世界中が注目している」と発言。法廷内の温度も問題視し、「凍えるようだった」とした。

トランプ前大統領は11月の大統領選で共和党候補として、民主党現職のジョー・バイデン大統領と対決することが確実な情勢となっている。前大統領は、ニューヨーク・マンハッタン地区検察による起訴を「政治的」と非難している。

いったん選任された2人を解任

この日、マーシャン判事は、前日までに選ばれた陪審員のうち2人を解任した。

「2番」の女性は、友人や家族から多くのメッセージを受け取り、偏見のない公平な立場で裁判に臨めなくなったと、自らの事情を説明した。

「4番」の男性については、犯罪歴がないとうそをついた可能性があることがマンハッタン地検の調べでわかったとされた。判事によると、男性は1990年代に政治広告を引きはがしたとして逮捕されたとみられる。男性の妻も、同地検が捜査した汚職事件に関わった可能性があるという。

マンハッタン地検の元検事ジェレミー・サランド氏は、陪審員が選任から2日たたずに解任されるのは「非常に珍しい」とBBCに話した。

ニューヨーク・ロー・スクールのアナ・コミンスキー教授は、この日の動きから、この刑事裁判が普通のものとは違うことが分かると説明。関与する人々への社会的な圧力は類を見ないものになるとし、個人を特定する情報の流出を防ぐことが大事だと述べた。

選任までの困難

この日は、補欠の陪審員1人も選ばれた。19日には、さらに5人の補欠の選任が続けられる。

数百人の候補の中から陪審員を選ぶのは、困難な作業だった。

陪審員候補の一人はイタリアで生まれ育ち、トランプ前大統領とイタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相を関連づける発言をし、退席させられた。

トランプ前大統領の弁護団は、陪審員候補らに対し、前大統領に強い感情を抱いていないかを探る質問を浴びせた。前大統領は法廷で腕を組んで、その様子を眺めていた。

候補の1人は「彼の政策のほとんどに反対だ」と発言。別の候補は「彼の人格が好きではない」と言った。

ある女性候補については、ソーシャルメディアへの古い投稿を、前大統領の弁護団が問題視した。その投稿では前大統領を「人種差別主義者、性差別主義者、ナルシシスト」と書いていた。判事はこの候補を除外した。

別の女性候補は、前大統領の弁護士の1人、スーザン・ネクレス氏と15年前に会ったことがあると述べた。ネクレス氏も法廷で、「彼女は私の家に一晩泊まった」と話した。この候補も除外された。

(英語記事 Trump criminal case: Full 12-person jury seated in Manhattan

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cj5lq6yeq40o


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