2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2024年5月14日

 だが、そうした推測は外れていたようだ。研究者の調査によると、意外な姿が浮き上がる。まず生息数は増えていた。

 日本の場合なら、シカやイノシシが激増していることは知られるが、ほかにクマやサル、カモシカなども軒並み増えていた。またアライグマやハクビシン、キョンなど外来種も増加中だ。もちろんイリオモテヤマネコやアマミノクロウサギのように絶滅を心配される種も存在するが、むしろ少数派だった。

 そして森をはじめとする自然も豊かになっていた。面積が増えたのではなく、植物の数と種類が豊富になっている。

 スギやヒノキの人工林は、動物の餌となる植物のない「緑の砂漠」扱いされがちだが、実際に人工林の中を歩くとそうでもない。樹齢の高い人工林の場合、高木の下に多くの広葉樹や草が生えている。人工林も放置されると、広葉樹と混交した森に変わっているケースが少なくない。

 そして果実や若葉など餌も十分にあった。植物が繁れば昆虫や小動物も多くなるから、雑食性の動物の餌となるだろう。

 このように見ていくと、野生動物の生息数が増加したことで、従来の生息地は飽和状態となっている可能性がある。だから押し出されるように生息できる地を求めているのではないか。

動物にとっても“憧れの地”である都会

その新天地となるのが、人里だ。最初は農山村に出没したが、やがて地方都市、そして大都市をめざすようになってきた。

 とくに若いクマは、もともと広く遊動する性格を持つものが多い。そして見つけた新たな生息地が都会であり、アーバンベアとなったのでないか。若者が都会に憧れる現象は、人間だけではなかったようだ。

 そして都市の中の緑も、同じく豊かになっている。公園や緑地帯などの木々も、長い年月が経って大木となり茂みも深くなった。また見落としがちだが、個人の住宅の庭にも緑は豊富にある。なかでも空き家の庭は、放置されているがゆえに植物が茂り放題になっているところが多い。

 総務省の発表によると、23年10月時点で全国に900万戸を超える空き家があるという。東京都の空き家数は89万8000戸。そのうち長期間利用されていない空き家は385万戸あり、都市部のそうした家の庭が、野生動物の隠れ家になっていることが少なくない。

 都会には餌も十分にある。ネズミや小鳥などを捕食したり、ペットの餌を横取りするケースもある。


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