また残飯などを含む生ゴミは、飲食店の多い都会ほど多い。ゴミ集積所を荒らすのはカラスだけでなく、イノシシやタヌキ、アライグマなども漁っているという。
都会に出てくる動物側の気持ちになってみよう。最初は人が多くて危険を感じたかもしれないが、意外と人は自分たちを追わない。むしろ避けてくれる。
空き家の敷地には、踏み込む人もいないから安全だ。ときにノラネコに餌を与えるように、野生動物にもペットフードなどを撒く人もいるのだ。つまり都市は動物にとって安全な住み処があり、食べ物も豊富な新天地なのである。
しかし、クマのような身体が大きな動物が、生息地から数十キロ、どのように都市の中心部まで見つからずに到達できるのだろうか。
実はとっておきの侵入ルートがある。それは河川だ。河川敷や堤防などの緑地帯のほか、中州に草が繁っているところも多く、身を隠しつつ移動できる。そして都心まで到達したところで、生ゴミの臭いにひかれて街中に出没するのかもしれない。
どう共生すべきか
日本の事例を元に都会に出没する野生動物の行動を説明したが、海外でも事情はそんなに変わらないだろう。ヨーロッパや米国でも、都会に緑が増えるにつれて野生動物も姿を頻繁に見せるようになったらしい。
さて、アーバンベアをはじめとする“都会に憧れる野生動物”に、人はいかに対応するべきだろうか。
冒頭のように銃使用を緩和して駆除する対策は、目先の状況としては仕方ないが、根本的な解決にはなるまい。森で増えた獣たちは、続々と都会をめざす。それでは駆除も延々と続けなくてはならず、リスクもコストも高くつく。
やはり野生動物に人の生活エリアへ入りづらく、入ると危険であると思わせなくてはならない。そのためには安易に人里との境界を越えないようにするほか、侵入した獣をすぐに追い払える体制も必要だろう。
同時に人側も、動物の生態を知っておかねばなるまい。野生動物が都会に誘引される理由を取り除くとともに、人のどんな行動が攻撃本能を刺激するのかを知って、襲われるリスクを減らしたい。
もっとも「都会への憧れ」を抑えるのは容易ではないだろう。そのことは野生動物以上に、人間自身がもっともわかっているのではなかろうか。