環境省は、今年度に入って住宅地内における猟銃の使用に関する規制を見直せるか検討し始めた。市街地に出没する野生動物の捕獲や駆除を迅速に行うためだ。
昨年は、クマ(ヒグマとツキノワグマ)が人里に頻繁に出没して被害が多く出たことが話題を集めた。クマに襲われた人は219人、そのうち6人が死亡している。
今春も、すでに各地でクマの目撃が相次いでいる。とくに注目すべきは、農山村だけでなく、都会への出没が増えている点だ。それも県庁所在地クラスの大都市の都心まで侵入している。
もはやアーバンベアこと都会に出てくるクマが一定数いるのは間違いないだろう。それに対応する体制づくりの一環が、銃規制の緩和なのだ。
現行の鳥獣保護管理法では、住宅地など人里における猟銃の発砲は禁止されている。かろうじて警察官が緊急性が高い状況と判断し、ハンターに命令を出した場合に限って撃てるのだが、警察官が常に現場にハンターとともにいるわけではなく、また動物の行動に素人である警察官に判断を委ねるとタイミングを逃す事例も多かった。
そこで市街地でもハンターの判断で、銃を使えるようにできるかどうかを検討するそうだ。そのほか麻酔銃についても、現在はニホンザルのみに使用を認めているが、クマに対象を拡大することも検討対象にする。
もちろん発砲可能の条件は厳しく定めなくてはならないだろう。ただ問題の根幹は、市街地における銃使用の可否ではない。野生動物が多く都会に出没するようになったことが問題なのだ。それもクマのような大型で危険な動物が増えているのはなぜか。
世界的にも生息数が増加
実は同様の事例は、日本だけではなく、世界的に頻発している。たとえばイタリアでは、ローマなど大都会にもイノシシが多数出没して、人や自動車と衝突したり、人にかみつくなど被害が続出している。
そこで昨年、イタリア議会は都市部でもイノシシ狩りを認める法律を可決した。銃を使わないと駆除が追いつかないのである。
また米国では、2022年にニューヨークの住宅街にコヨーテが現れて、子供を襲った事件が起きた。ロサンゼルスでピューマが公園に住みつき、動物園のコアラやペットのイヌを襲うケースも起きた。このピューマは、後に交通事故で亡くなるというオチまでつく。まさに大都会に暮らす野生動物らしい最期だった。
こうした事象を不可解と思う人もいるだろう。なぜなら都会は緑が少なく、動物にとって餌となる植物も獲物も少ないし、安心できる隠れ家がない。人が多いから移動も困難だし、見つかれば追いかけ回される。そんな都会にやって来るのは、よほど本来の生息地の環境が悪化(開発で森が失われた、餌が少なくなり飢えている)からではないか。