2024年12月4日(水)

革新するASEAN

2024年7月2日

2025年以降のASEANの成長戦略

 ASEANでは、2015年末に「ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community: AEC)」が発足し、現在は2016年~2025年までを対象とする「AECブループリント2025」に基づき域内の経済・金融統合を進めている(詳細は『Wedge』2023年10月号「ASEANの経済・金融統合 保護主義拡大でも着実に前進」を参照)。米中貿易摩擦をはじめとする保護主義の拡大やコロナ禍でのサプライチェーンの停滞といった逆風が強まる中でも、域内の経済・金融統合を着実に進めている。

 2025年まで残り2年を切る中、未達成目標の実現と、さらにその先の統合深化に向けた戦略の策定が進められている。2023年9月にインドネシアのジャカルタで開催された第43回ASEAN首脳会議では、「第4 ASEAN協和宣言(ASEAN Concord Ⅳ)」が採択された。ASEANは、これまでに1976年、2003年、2011年の3回にわたり協和宣言を採択している。特に、2003年に採択された第2 ASEAN協和宣言(ASEAN ConcordⅡ)では、経済、安全保障、社会文化の3つの共同体で構成されるASEAN共同体の創設が宣言されるなど、ASEANの方向性を示す重要な文書と位置付けられている。

 第4 ASEAN共和宣言は「ASEANは重要、成長の中心に関するジャカルタ宣言(Jakarta Declaration on ASEAN Matters:Epicentrum of Growth)」という表題を掲げており、ASEANがインド太平洋地域の様々な多国間協力枠組みにおいて中心的役割を果たす「ASEANの中心性」の維持や、2026年~2045年までの20年間を対象とする「ASEAN共同体ビジョン2045」(策定中)の重要性などが強調されている。

 3つの柱として、従来の安全保障共同体の内容を継承した「ASEANは重要」、従来の経済共同体と社会文化共同体の一部内容を再編した「成長の中心」に加えて、新たに「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)の実施」が明記された。AEC関連での取り組みとしては、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)および域外諸国とのFTA(ASEAN+1 FTA)のアップグレードや東アジア地域の包括的経済連携(RCEP)協定の全面的実施、ASEAN域内における決済の連結性加速や地域通貨決済の促進といった金融統合の推進、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やグリーン経済の加速などが盛り込まれており、具体的な戦略「AECポスト2025アジェンダ」は、2025年のASEAN首脳会議で採択される予定となっている。

期待される日本・ASEAN企業の連携

 米国の通商政策における対中強硬政策は、議会超党派でのコンセンサスとなっており、11月の大統領選の結果に関わらず、既定路線として捉える必要があり、デリスキングの流れは今後も続く公算が高い。日本企業は、これまで製造業を中心とする生産ネットワークの構築やインフラ整備などを通じてASEANの経済発展を支えてきたが、今後も、ASEAN諸国の産業高度化やグリーントランスフォーメーション(GX)など新たな課題の解決に向けて果たす役割への期待は高く、実際、日本企業とスタートアップを含む現地企業との協業や人材交流の動きも活発化しつつある。こうした双方の強みを活かしながら、ともに成長していくことが期待される。

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