2024年8月27日(火)

BBC News

2024年8月27日

ドナルド・トランプ前米大統領が2021年の退任後にホワイトハウスから機密文書を持ち出し違法に所持していたとされる事件について、米司法省のジャック・スミス特別検察官は26日、裁判を復活させるよう連邦控訴裁判所に上訴した。

この事件をめぐっては今年7月、フロリダ州連邦地裁のアイリーン・キャノン判事が前大統領側の主張を受け入れ、事件を捜査したスミス特別検察官を司法省が任命したことが違憲のため、起訴は無効だと判断した。キャノン判事は、トランプ氏が大統領時代に任命した。

スミス特別検察官は、26日にアトランタの連邦控訴裁に提出した要望書の中で、キャノン判事の見解は判例から「逸脱」しており、合法的に任命された特別検察官の歴史について「不十分な説明しかしていない」と主張した。

前大統領の弁護団は、9月26日までに反論を提出しなければならない。

機密文書に関する事件で前大統領は、国防情報を含む機密情報の意図的な所持など、公文書の扱いをめぐる複数の重罪の罪状について、いずれも無罪を主張している

37件わたる罪状では、前大統領はフロリダの邸宅にファイルを保管し、捜査当局にうそをついたり、文書の取り扱いに関する捜査を妨害しようとしたりしたなどとされる。

この事件では、前大統領の側近のウォルト・ナウタ氏と、私邸マール・ア・ラーゴの元スタッフ、カルロス・デ・オリヴェイラ氏も起訴されているが、2人とも無罪を主張している。

「判例から逸脱している」

スミス特別検察官のチームは、司法長官による特別検察官の任命を擁護。上訴の書類では、「連邦議会は、予算やその他の法律を通じてこの慣行を承認している」と述べた。

また、「司法長官は、正式な予算の下に特別検察官を任命した」と指摘し、「そうではないと判断した連邦地裁は、拘束力のある最高裁判例から逸脱し、特別検察官の任命を許可した法令を誤って解釈し、長年にわたる司法長官による特別検察官任命の歴史を十分に考慮しなかった」とした。

書類ではさらに、リチャード・ニクソン元大統領に対する1974年の画期的な裁判に言及し、司法長官が特別検察官の「任命権」を持つことを証明していると主張した。

「ニクソン裁判は、この問題を検討した他のすべての裁判所が認めているように、特別検察官の任命に対する被告側の異議を決定的に打ち破っている」

「議会は、多くの行政府の長と同様に、司法長官に、法律で課された責任を遂行するため、長官が率いる機関を構成する広範な権限を与えている」

この事件は、トランプ前大統領が直面している4件の刑事裁判のうちの一つ。だが、機密文書事件の先行きにかかわらず、11月の大統領選挙を前に裁判が始まる可能性は極めて低い。

専門家らは、前大統領が選挙に勝った場合、自分に対する訴訟を却下するよう司法省に命じるだろうと予測している。

特別検察官とは

特別検察官には連邦検事の権限があり、記録の召喚や刑事告発ができる。特別検察官は、独立した公平な調査を促進するために、司法長官によって任命される。

また、偽証や司法妨害、証拠隠滅、証人への脅迫といった犯罪によって捜査を妨害した者を起訴することもできる。

司法省は特別検察官事務所に職員を提供するが、その職務を日常的に監督することはない。

特別検察官によって捜査されている著名人はトランプ前大統領だけではない。ジョー・バイデン大統領の息子ハンター氏も、メリック・ガーランド司法長官が任命した特別検察官によって、銃所持と税金をめぐる罪で起訴されている。

ガーランド司法長官は2022年11月スミス検事を特別検察官に任命。スミス氏はこの事件に加え、前大統領が2020年大統領選の結果を覆そうとしたとされる事件の2件で、前大統領を起訴している。

米連邦最高裁が7月、歴代大統領について、刑事責任が部分的に免責されるとの判断を下したため、どちらの訴訟も不透明な状況に直面している。

(英語記事 Special counsel appeals to resume Trump documents case

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4gl4y9w7xpo


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