フランスのエマニュエル・マクロン大統領は26日、7月の総選挙で最大議席を獲得した左派連合「新人民戦線(NFP)」による政府を認めることはないと発言した。
マクロン大統領は、フランスは制度の安定を必要としており、左派は国民議会(下院、議席数577)で信任を獲得できないと述べた。
その上で、27日にも各党党首らと新たな協議を始めると述べ、左派に他の勢力との協力を促した。
マクロン氏の発言を受け、NFPは街頭での抗議行動を呼びかけるとともに、マクロン氏の弾劾を要求した。
NFPは、マクロン氏が総選挙を決めた後に、急進派の「不屈のフランス(LFI)」、穏健な社会党、緑の党、共産党によって結成された。総選挙では180議席を獲得。過半数議席を獲得した政党がいなかったため、第1勢力として首相を選ぶ権利を得たと主張している。
先には、パリ市の高官で経済学者のリュシー・カステ氏(37)を首相候補として推薦した。
マクロン氏の与党連合は大きく議席を減らして159議席、勝利が予想されていた極右「国民連合(RN)」は142議席だった。
7月の総選挙で与党連合を率いたガブリエル・アタル首相は選挙後、パリ五輪の期間中も留任しており、NFPの怒りを買っている。
マクロン氏は26日、選挙以降に新政権に関する協議を続けており、今後も続けると述べた。
「私の責任は、この国が妨げられることも弱体化することもないようにすることだ」
「社会党と緑の党、共産党は、他の政治勢力と協力する方法をまだ提案していない。そうするかどうかは彼ら次第だ」
しかしマクロン氏は、NFPを構成する主要政党の一つであるLFIについては言及しなかった。
LFIはこの発言に怒りを表明。全国代表のマニュエル・ボンパール氏は、「容認できない反民主主義的クーデター」だと表現した。
共産党のファビアン・ルーセル全国書記はBFMテレビに対し、マクロン氏は「わが国に深刻な危機」を引き起こそうとしていると語った。緑の党のマリーヌ・トンデリエ党首はソーシャルメディアで、フランス国民の4分の3が「マクロニズムとの政治的決別」を望んでいると述べた。
NFPはこれまで、カステ氏の首相立候補が議論されない限り、今後の協議に参加しないとしてきた。
しかし、カステ氏は選挙で選ばれておらず、マクロン氏が首相として選ぶ可能性は低いとみられている。
また、与党連合も極右RNも、NFPからの首相候補を、議会での投票で落選させると宣言している。
26日にマクロン氏と会談したRNのマリーヌ・ルペン氏とジョルダン・バルデラ党首は、NFPはフランスにとって「危険」だと述べた。
仏政界ではこのほか、ベルナール・カズヌーブ元首相(社会党)や、中道右派でオー=ド=フランス地域圏知事を務めるグザヴィエ・ベルトラン氏(共和党)の名前が首相候補として挙がっている。