2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月26日

 2024年8月10日付のワシントン・ポスト紙で、同紙のファリード・ザカリアが、民主党大統領候補カマラ・ハリスは政策の中身は軽めにして、国民の感情や直感に訴える雰囲気に力点を置いた選挙戦を展開し、今のところ巧く行っているという観察を書いている。

民主党大統領候補のハリス氏の選挙戦略は今のところうまくいっている(Anadolu/gettyimages)

 近年、多くの研究が、人々の投票行動の傾向は合理的ではなく、むしろ、感情的、イデオロギー的、道義的に投票していることを示している。

 民主党のハリス大統領候補は、焦点を絞った規律ある選挙戦を戦って来た。それは、政策の中身は軽めで感情に訴える選挙戦である。

 2016年のヒラリー・クリントンの選挙戦の特質だった大量の政策ペーパーはない。ハリスは具体的な政策を詳述することを強いられるインタビューはいまだ行っていない。

 その代わり、彼女は人間的な言葉遣いで国民に自身をダイナミックで温かくユーモアのある楽観的な人間として紹介した。それは雰囲気に力点をおいたもので、これまでのところ、巧く行っているようである。

 彼女の副大統領候補の選択も同じパターンである。彼女は、庶民的で愛想が良く心の温かい男とのイメージを全国に投影する人物を選んだ。ティム・ウォルズの選択は、時にはEQがIQと同じくらい重要ということを想起させる。

 これは立場の逆転である。トランプと共和党はその傾向として強さを強調し恐怖を喚起する感情の政治の達人である。しかし、今やハリスの将来に対する楽観性とウォルズが遊説で語る「喜び」の感覚が支配的のように見える。

 別の意味での逆転もある。20年までの30年間、すべての大統領選挙で民主党は候補にハーバードかイエールの卒業生を選んで来た。しかし、ハリスもウォルズも、バイデンとハリスから始まったアイビーリーグ離れを継続しつつある。逆にアイビーリーグの候補を擁立しているのは共和党である。


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