全国党大会を前に、米国民主党のカマラ・ハリス大統領候補が着々と支持基盤を広げつつある。一方の共和党のドナルド・トランプ大統領候補への支持は、共和党大会後も意外に伸び悩み、陣営は反撃の糸口をつかむのに苦慮している。
“異例”の黒人からの多額献金
「大量出血でひん死状態だった民主党が息を吹き返した」「ハリスついにトランプをリード!」「活気づく民主党が議会選挙でも優位に」――。バイデン氏の大統領選からの撤退後、急遽民主党候補に躍り出たカマラ・ハリス副大統領の機敏で精力的な選挙活動ぶりについて、米マスコミは賑やかな見出しで一斉に報じ始めている。
民主党内では早くも「勝利が十分視界に入って来た」との声さえ聞かれる。
その根拠として指摘されているのが、近年ブロック票として重要度が増しつつある黒人、ヒスパニック、アジア系などマイノリティ人種、都市近郊女性層、無党派層、若年層などへの急速な支持の広がりだ。マイノリティ人口は2020年国勢調査によると、10年前の調査時と比べ3800万人も増加している。
今回、ハリス候補が党指名を前提に活動を開始して以来、「山が動き始めた」とも評される支持層のうねりの口火を切ったのが、全米黒人女性支援組織として知られる「Win With Black Women=WWBW」だった。
同組織は、バイデン氏が大統領選からの撤退とハリス氏への支持表明を電撃的に行った日の去る7月21日夜、間髪入れず全米のメンバーにオンラインによる「ハリス支援決起集会」を呼びかけ。その場で4万5000人が参加し、集会開始から3時間以内に140万ドルという記録的政治献金や寄付の申し出があった。
組織事務局は当初、全体の集金目標額を「11月大統領選までに100万ドル」としていたが、一夜にして軽くそれを突破、メディアで大きな話題を集めた。
続いて翌22日、黒人組織の男性版「Win With Black Men=WWBM」も同様趣旨のオンライン集会を呼びかけたところ、全国から5万3000人が参加。開催から4時間足らずの間に130万ドルの集金があり、こちらも記録破りとなった。
圧倒的に富裕層の多い白人と比べ低所得者が大半を占める黒人層の間での一人当たりの政治献金額は平均10ドル程度とされてきただけに、瞬時にこれだけ多額の資金が集まったこと自体、極めて異例とされ、小口ながら予想以上に多くの黒人たちがハリス支援に具体的に動き出したことを示している。
ほぼ同時に、全米有権者の15%を占めるといわれるヒスパニック系市民の間でも、たちまちハリス支持者が広がり始めた。