農業の生産性の向上、先端技術の導入を後押しする『スマート農業技術活用促進法』が2024年10月より施行されます。ロボット、AI、IoTなどを活用したスマート農業技術は、作業の軽減や効率化が可能となり、農業の生産維持が期待されています。
日本の農産物は世界的にも品質がよいと言われてますが、国内の農業を取りまく環境には、明るい未来の陰に問題も山積しています。国内産業の問題を提起する人気記事の中から、日本の農業の未来と課題をテーマにした5本を編集部が厳選してお届けします。
<目次>
1:【秋田の科学者が生んだ新型コシヒカリ】日本のコメが抱える二大問題を解決できる新品種にまつわる誤解(2023年6月29日)
2:「安全安心で高品質」日本の農産物が海外で評価されている一方で心もとない国内の農業事情(2023年3月24日)
3:<北海道にいながら沖縄の農作物を栽培>テクノロジーによるスマート農業で「ゲームチェンジ」を起こす(2023年1月25日)
4:<美しい棚田を守りたい>小ロット、物流費高騰、農家の高齢化…日本のコメづくりが抱える構造的問題(2022年6月29日)
5:<食料自給率の低迷はなぜ?>日本農業を正しく理解するためにデータで見る都道府県別自給率(2022年9月20日)
1:【秋田の科学者が生んだ新型コシヒカリ】日本のコメが抱える二大問題を解決できる新品種にまつわる誤解(2023年6月29日)
コシヒカリ環1号を知っていますか? コシヒカリから生まれた新品種で、カドミウムをほとんど吸収しないという性質を持っています。このコメの血を引く「あきたこまちR」という品種も、2年後には登場しそうです。
実はこのコシヒカリ環1号、日本のコメが抱える二大問題を解決できるかもしれないすごい品種です。ところが今、「放射線育種米」や「放射線米」などと名付けられ、SNSやYouTube、TikTokなどで情報が流されて「ヤバイ」などと言われ始めました。放射線という言葉が誤解につながっているようです。このままでは風評被害にもつながりかねません。
コシヒカリ環1号はどんな品種なのか? なにがすごいのか? 科学的に正しい情報を提供します――。
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2:「安全安心で高品質」日本の農産物が海外で評価されている一方で心もとない国内の農業事情(2023年3月24日)
「日本のお米が美味しいのはみんな知っています」とシンガポールの日系スーパーで現地スタッフから声をかけられた。2023年の年明け早々、3年ぶりに、シンガポールを訪問し、日本企業の飲食店が活況を呈し、日本産農産物などがシンガポール消費者に人気であるのを目の当たりにした。農林水産物・食品の輸出額が22年は過去最高を記録し、25年に2兆円、30年に5兆円を掲げる日本にとって重要な課題が見て取れた。
シンガポールは、丁度東京都23区の山手線の内側の地域に似ていると言われる。広さは23区内面積に近いが、人口は550万人ほどで1人当たりの所得は日本人とほぼ変わらないものの、高所得層が多く、1人当たりの国内総生産(GDP)は2倍近いと言われている。
街の象徴とも言えるオーチャード通りは銀座や青山などのようだし、マーライオン公園は、東京のお台場や豊洲などを連想させる。オーチャード通りから少し離れ、日系スーパーマーケットがある「グレートワールド」はアークヒルズを思わせる――。
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3:<北海道にいながら沖縄の農作物を栽培>テクノロジーによるスマート農業で「ゲームチェンジ」を起こす(2023年1月25日)
「農業はもっとクリエーティブなものになる」。無人農業ロボット研究の第一人者で『下町ロケット ヤタガラス』(池井戸潤、小学館)の登場人物のモデルになった野口伸教授はこう語る。野口教授が描く農業の未来とは─―。
日本では農業従事者のさらなる減少や高齢化によって、1人当たりの農作業量が増える。省力化・省人化は急務だ。また、農業技術をいかに次世代の担い手に継承していくかも課題である。
スマート農業は、日本の農業が抱える複雑な課題の解決策の一つとなる。これまで民間企業が培ってきたロボット、AI、センサーなどの周辺技術は、すでにさまざまな産業に応用されている。一見、農業に関係がないように思える技術でも、農業技術と組み合わせてシナジー効果が生まれれば、農業に「ゲームチェンジ」を起こすことができるはずだ。
スマート農業は、生産から収穫までの情報化を進め、生産性向上を目指す部分に注目が集まる。だが、その本質はデータの利活用にある。農業のデータをフードチェーン(農産物の生産から消費までの流れ)の上流から下流まで一貫して活用できれば、消費者のニーズを踏まえた効率的な生産・出荷体系が構築できるようになる。これは農産物に消費者のニーズを加味することになるので付加価値の向上にも寄与するだろう――。
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4:<美しい棚田を守りたい>小ロット、物流費高騰、農家の高齢化…日本のコメづくりが抱える構造的問題(2022年6月29日)
6月中旬、新潟県十日町の星峠棚田に行ってみた。星峠棚田は、NHKで特集番組が放映されるなど、景観が美しい棚田として知られている。さまざまな保全措置が講じられ、2019年に議員立法で「棚田地域振興法」が成立したことにより、さらなる支援策が講じられており、その実態を見ようと、この棚田で生産されるコメを仕入れ販売する川崎市の成川米穀の成川亮治社長の軽トラックに同乗した。しかし、そこで見聞きしたことは日本の稲作が置かれている厳しい現実であった。
星峠棚田の現状に触れる前に棚田米を仕入販売している成川米穀の成川社長の取組みを紹介したい。その方が棚田を取り巻く環境への理解が深まるだろう。
成川米穀は創業1929年という老舗の部類に入る米穀小売店で、現社長の成川亮治さんは3代目。成川さんが棚田米を仕入販売しようと思ったきっかけは棚田の景観に惚れ込んだのが最大の理由で、棚田ネットワークの会員になり、自ら全国各地の棚田を訪れて、そこで生産されるコメを商品化しようと思い立った――。
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5:<食料自給率の低迷はなぜ?>日本農業を正しく理解するためにデータで見る都道府県別自給率(2022年9月20日)
政府の「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」は、9月9日の会合で、「食料・農業・農村基本法」の見直しを決定し、おおむね1年をかけて方向性を得るとした。2024年の通常国会にも改正法案が提出されるものと予想される。
論点となるのは、ウクライナ侵攻に端を発したサプライチェーンを含む「食料安全保障の強化」と地球温暖化、カーボンニュートラル、グリーンニューデイールを組み込んだ食料・農業・農村の持続的発展であろう。
そこで、この際、基本法の改正とも関連して、正しい理解と共通認識があるようで実は無い「食料自給率」について、各都道府県と諸外国・地域の数字を比較し、今後の日本としての対応方向を明らかにしてみたい――。
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