2022年10月3日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年9月20日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 政府の「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」は、9月9日の会合で、「食料・農業・農村基本法」の見直しを決定し、おおむね1年をかけて方向性を得るとした。2024年の通常国会にも改正法案が提出されるものと予想される。

(okugawa/gettyimages)

 論点となるのは、ウクライナ侵攻に端を発したサプライチェーンを含む「食料安全保障の強化」と地球温暖化、カーボンニュートラル、グリーンニューデイールを組み込んだ食料・農業・農村の持続的発展であろう。

 そこで、この際、基本法の改正とも関連して、正しい理解と共通認識があるようで実は無い「食料自給率」について、各都道府県と諸外国・地域の数字を比較し、今後の日本としての対応方向を明らかにしてみたい。 

カロリーベースが低くても農業は栄えている

 農林水産省が8月、2021年度の「食料自給率」を発表した。カロリーベースが38%(+1%)、生産額ベースは63%(▲4%)であった。そして、国際比較での説明は、「我が国の食料自給率は、諸外国と比較すると、カロリーベース、生産額ベースとも低い水準にあります」と、伝統的パターンが踏襲されている。

 また、報道でも、「食料自給率、低水準」(8月5日、産経新聞)、「食料自給率の低迷」(8月20日、日本農業新聞)とやや自虐的な言葉が並ぶ。

 この発表の際には、20年度(概算値)の都道府県ごとの食料自給率(カロリーベースと生産額ベース)も示されている。ここから、身近な国内各都道府県の数字が「なぜこの水準なのか」、その背景や理由を探っていく。

 まず、第一グループである。北海道(カロリーベース217%、生産額ベース216%)、青森(125、250)、岩手(105、216)、山形(143、189)、新潟(111、111)は、カロリーベース・生産額ベースとも食料自給率が100%を超える。

 いずれの道県も農地面積が大きく、他の都府県への出荷が多いことが特徴である。とくに、北海道は、カロリー源になる主要穀物等のうち、コメ、小麦、ジャガイモ(バレイショ)で全国トップクラスの地位にある。

 この姿は、カナダ(233%、118%)、豪州(169、126)、米国(121、90)、フランス(131、82)に似ている。農地面積が大きく輸出をしていないと自給率は高まらない。因みに、農地面積が日本の10倍のウクライナは、このグループだろう。

 なお、この15年ほどの傾向として、青森や山形は、園芸部門への展開で400億~200億円ほど農業生産額を増やしている。一方、コメ偏重の新潟は400億円ほど減らしている状況にあり、カロリーベースと生産額ベースはパラレルに推移するものではないことも分かる。

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