2022年9月27日(火)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年9月20日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 その上で、進んでいる世界の事例も取り上げたい。自動車産業の衰退で過疎化が進み人口が半減し過疎化した米国デトロイトでは、空き地やビルの屋上に至るまで、都市での農業が復活され、デトロイトの都市型農業(アーバンファーム)が推進されている。

 これを支え、活動しているのは、教会、福祉団体、学校などで、都市を荒廃させないことを旗印に、でんぷん食に偏りがちな失業者・低所得者に新鮮な野菜と就業の場を、子どもたちには情操教育の場を提供するといった形だ。地域支援型農業(CSA)、スクールファームなどの言葉は、ごく一般化している。

 全米に広がりつつあるこの動きは、欧州連合(EU)で盛んになっているFarm to Fork(農場から食卓まで)に最も近接したあり方といえるのではないか。

日本の農業はどう世界と比していくのか

 世界各国の一人当たりの農地面積の比較数字を見ると、日本3.5アール(a)/人に対して、カナダは173a(50倍)、豪州1538a(437倍)、米国126a(40倍)、EUは20~40a(7~12倍)である。

 限られた農地を健全な状態で維持し、効率的に使うのが国家的課題である。①農地、耕作可能地の実態を知る、②どのように使うか日ごろから考えておく(ここには、肥料、農薬、飼料、そしてエネルギーなど生産資材や農法転換も考えておく、土壌の調査・使い方、食料・資材の備蓄、消費者の応援、農地・農村の再生可能エネルギー利用も含まれる)、③確保した農地はシーズンを通してフルに活用する、④海外への輸出も食料備蓄の一手段と位置付ける、⑤これらを食料需給の状況に応じて段階的に対策を実行するのである。世界各国に比べ農地面積が小さい日本はより努力が必要である。

 農地面積が大きい第一のグループ、付加価値の高い農産物を生産する第二のグループ、そして「都市型」は、①~⑤までそれぞれ位置づけや目指すべきところが異なる。各都道府県や地域がそれぞれの生産体制や戦略を立てるとともに、そうした実態を総合した方針を国として持つことが必要であろう。「みんな違ってみんないい」多様性こそ!の時代である。

  
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