2022年6月27日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年6月14日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 小麦で第5位、トウモロコシでは第4位と穀物の大輸出国ウクライナでは、戦火による生産と輸送の困難、そして、黒海に敷設された機雷により、オデーサ等の主要3港湾地域での積み出しが不可能となっている。国内に、目下は2000万トン超が滞留しており、この秋までには商社筋などは3000万~4000万トン、ゼレンスキー大統領は最大7500万トンに上ると指摘している。

(SergBob/gettyimages)

 こうした状況もあり、世界はいま「食料危機」に直面している。国連の報告(6月8日)でも、ウクライナ侵攻の影響により、世界で95カ国16億人が食料、エネルギー、金融の3分野いずれかで深刻な危機にさらされているという。

黒海に頼る物流の危険性を露呈

 「物流」の途絶・中断が生じている背景の一つには、ウクライナの穀物等の海外輸出が「黒海沿岸の3地域」(オデーサ・イリチェフスク・ユージニー)(ミコライイフ)(ヘルソン)に集中し、これらに代わりうる物流網の整備が進んでおらず、またその問題も日頃から意識されてこなかったことにあるのではないだろうか。

 実際、オデーサ地区は、パナマックスサイズ船舶(パナマ運河を通航できる最大船型)の航行も可能という好条件のため、同地区から積み出されていた小麦、トウモロコシなど穀物の量は年間4000万トン前後、ウクライナ穀物輸出量の9割以上を占めていると推定される。現在の黒海側への積み出しは、陸路でドナウ川沿いの4つの小港へ搬送し、その後はバージ(はしけ船)輸送により隣国ルーマニアの港へ、という積み替えで対応しており、その可能量は、年間では最大でも500万トン程度という報道もある。(6月10日、日本農業新聞)

 ウクライナの物流網は、1865年に穀物の輸出・積み出し港であるオデーサと穀倉地帯間に鉄道が建設され、以来、ウクライナ主要都市間、またウクライナとモスクワを結ぶ鉄道が整備されてきた。穀倉地帯とオデーサ港と鉄道は、「三位一体」の関係だった(黒川祐次『物語ウクライナの歴史』中公新書)。つまり、ロシア帝国、ソ連時代を通じて、重要輸出産品である穀物等の輸出のラインは、黒海沿岸のオデーサとロシア・ベラルーシおよびロシア・モスクワの南北ラインのみが主軸であり、かつ、これらが平穏に継続的稼働するとの前提に立っていたとしか思えない。いわば、「油断」ともいえる。ロシアのウクライナ侵攻は、それが一変したことを意味する。

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