2024年12月12日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年6月4日

 ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した食料危機が世界で叫ばれている。日本には、まだ大きな影響は及んでいないが、食料の多くを輸入に頼る日本には、価格高騰という形で波が押し寄せることが予想される。こうした危機に直面しつつある中、かねてから課題とされていた食料自給率の向上に力を入れていくべきで、注力すべきは主食であるコメの生産である。

(WANAN YOSSINGKUM/gettyimages)

 ここには、これまで日本が目指していた質を求めたコメ作りから、収穫高を求めるコメ作りへの転換が急務となる。そのためには、「低コスト栽培」を目指すべきで、昨今注目を集めるドローン技術の活用による作業効率化と、それに合わせた品種改良への模索が考えられる。

かつては高反収に注力していた日本

 昭和前半の日本のコメ作りは、主食の増産によるコメ自給が目標だった。その目標達成のため、国の試験研究機関から地方自治体の農政担当部署にいたるまで、コメの生産量拡大に向けた新品種開発とその栽培技術開発が行われ、生産現場に普及されてきた。農機具メーカーも新品種を使った栽培技術を全国の水田で実践するための、作業機械類を開発し販売した。

 主食の国内生産とそれを国民に供給をするため、品種も含めた物や技術は、国の意向で開発され、生産現場へ普及されていった。コメの自給という明確な目標に向かい、最も効率よく知識と技術、そして資金を集中させ、目的をいち早く達成することにつながっていった。

 しかし、日本はコメの自給を達成した後、コメ作りの目標を変化させてしまった。国内の産地間競争に勝ち残るための「売れるコメ作り」として「うまいコメ作り」に集中し、高反収を求めずひたすら味の良いコメ作りを追求している。収量を犠牲にしていることになり、平均反収は伸び悩む。これは、品種改良や窒素肥料の施用量の増加、除草剤をはじめとする農薬の開発と普及によって、反収競争を激化している世界とは方向性が異なる。

 ただ、そうした過程で作り上げたコメの生産環境は今でも健在だ。イネづくりの水源確保のため、区画30アール(a)を基本として、用排水路や水田への取り付け道路を完備させる農地基盤整備事業を、国費を投入して長年行ってきた。優良農地である水田が全国で使えるようになり、寒冷地でも収量が安定する新品種も開発され、平均的な気象条件の年には、イネづくりのための水の心配がほとんどない、安定した栽培が可能にしている。低コストのコメ栽培が可能となる。


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