2022年9月29日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年3月1日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 ロシアによる「ウクライナ侵攻」の行く末は想像しがたいところだが、これが世界の食料需給に与える影響について幅広く検討し、さらに、わが国の食料需給に与えるインパクトと対応を予想して将来に備えることは極めて重要である。

 とくに、戦火の広がりと期間により、①一時的な集出荷・輸送の停滞、混乱(短期)、②本年の収穫への影響(中期)、③労働力や投資の停滞で生産水準そのものの低下・減産(長期)を念頭に、現下の食料需給と今後の対応方向に関する論点を整理しておきたい。

(Andrii Kozlytskyi/gettyimages)

ウクライナ、ロシア、世界の穀物の需給と価格

 ウクライナは、米国とカナダのプレーリー、アルゼンチンのパンパと並び、「世界三大穀倉地帯」と呼ばれ、「欧州のパンかご」、「世界のパンかご」とも称される。かつて第一次世界大戦の「総力戦・経済封鎖」で「カブラの冬」を経験したナチスドイツでは、きわめて肥沃な黒土のあるウクライナが垂涎の的であったと伝えられるほど豊かな地域である。穀物の輸出量は、年によって順位は変動するが、小麦の輸出では第5位、トウモロコシでは第4位の辺りに位置する。

 ちなみに、旧ソ連は、1980年代までは、穀物相場を左右する「大輸入国」であった。小麦とトウモロコシを合わせた年間の輸入量は、平均3500万トンあった。

 2000年代からは、市場経済の下で生産性を向上させて、ウクライナを含む旧ソ連圏の穀物が7000万トン近く輸出に向けられるようになった。ここでは、ロシア、ウクライナ、カザフスタンが生産の主力で、中近東、北アフリカへ、次いで、サブサハラのアフリカなどへ輸出。日本にも2018年産で1万8000トンを輸出している。

 ウクライナは、オデッサ港から、3000万トン以上の穀物を中国、欧州連合(EU)へ輸出している。トウモロコシは、その3割を中国に輸出、中国から見た依存率も3割となっている。

 なお、旧領のクリミアでは、高級財のコメも60万トン程度が生産されていたようだが、ロシアによる併合後は、ウクライナからの用水供給が断たれ、低級財のトウモロコシに転換せざるを得ず、今回の侵攻は、「クリミアの水源確保」も期待しているのではとも想像する。

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