World Energy Watch

2022年2月25日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 ロシアがウクライナに侵攻したが、欧米諸国は2月24日に打ち出した第2弾の制裁においても、ロシアに深刻な打撃を与える世界の金融機関の国際取引の決済システム、スイフト(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SCRL)からのロシアの締め出しを行うことができずにいる。

 第2弾の制裁になぜスイフトの制裁が含まれていないか問われた米バイデン大統領は、「オプションとしてはあるが、現在の制裁でも十分な効果があり、現時点では全欧州がスイフトからの締め出しを望んではいない」と答えている。

(Leonid Ikan/gettyimages)

 理由は簡単だ。欧米金融機関がロシアに持つ債権の回収が困難になることに加え、決済システムの利用を阻むと欧州連合(EU)諸国はロシアから、天然ガス、原油、石炭の輸入を行えなくなるからだ。

 ロシア企業も制裁対象となっているが、エネルギー企業への制裁も今のところ見送られている。ロシアの財源を断ち、効果が大きい制裁にすぐに踏み切れないほどエネルギー供給におけるEUのロシアへの依存度は高まっている。

 EUの一次エネルギー(電気、都市ガスなどの二次エネルギーに加工する前のエネルギー供給)におけるロシアの比率は需要量の2割を占め、冬場にEU向け供給が途絶えると天然ガスでのロシア依存度が高い、フィンランド、バルト3カ国、中東欧諸国では暖房が止まり、凍死者がでる恐れがある。エネルギーが最大の効果を生む武器になる、冬場にロシアが行動を起こすことは今までにもあった。

ロシア依存度が高まるEU

 EUのロシア依存度が高まっている一つの理由は、EUの脱炭素政策にあることは今までの連載でも指摘した(「脱炭素のジレンマに陥る欧州 日本も他人事ではない」)。2月16日と19日、2度にわたり、欧州委員会フォン・デア・ライエン委員長は、「仮にロシア、ガスプロムが欧州向けの全ての天然ガス供給を遮断しても、この冬を乗り切る安全サイドにEUはいる。当面の間、液化天然ガス(LNG)で代替することが可能だ。LNGを融通してくれる友好国に感謝する」と述べたが、最新のデータを見ると、天然ガス在庫量は昨年も下回っており、しかも時期的な要因で減少を続けている。「当面の間」が短期間であればともかく、ロシアからの供給途絶に冬の間耐えることは難しいように思える。

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