2022年10月7日(金)

バイデンのアメリカ

2022年2月16日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「明日にも侵攻の可能性濃厚」――。過去1カ月余り、バイデン政権は、ロシアの対ウクライナ軍事挑発を重大視し、繰り返し声を大に事前警告してきた。警告だけでなく、「決然たる報復の意向」まで表明している。過去にはなかったきわめて異例の対応だ。その背景に何があるのか――。

ウクライナ情勢は日に日に緊迫している(Russian Defense Ministry Press Service/AP/アフロ)

トランプ派は懸念するも方針は揺るがない

 トランプ前大統領と個人的親交のある保守系テレビ「Fox News」の著名アンカーマン、タッカー・カールソン氏は最近、「米国の国益に直結したものではない」として、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った場合でも、過剰反応すべきではないとの見解を吐露した。

 また、トランプ氏自身、在任中、プーチン露大統領と親交があっただけに、全米の多くのトランプ支持層の間では、西側の報復による米露関係悪化を懸念する声も少なくない。

 しかし、現民主党政権の毅然たる態度は一歩も揺るがず、日欧同盟諸国を巻き込んだ大規模な「懲罰的対露制裁措置」を準備中だ。

 米政府が、切迫する国際危機について、最高度のインテリジェンス事前公表も含め、これほど徹底した世界世論喚起のキャンペーンに乗り出したのは、近年ではきわめて珍しい。 

 その背景には、次のような抜き差しならぬ事情と周到な打算がある:
①旧ソ連の1979年アフガン占領、ロシアの2014年クリミア併合の苦い教訓
②台湾とのリンケージ
③大統領が就任後掲げた「専制主義との戦い」という大看板
④中間選挙への影響
――の4つだ。

 以下、順を追って説明する。

インテリジェンスの欠陥を露呈

 ①1979年12月24日、ソ連は突如、8万人規模の部隊をアフガニスタンの首都カブールに投入、民主派の首相を追放するとともに、強制的に親ソ政権を樹立した。国内各地ではたちまち抗議の渦が広がったほか、ソ連を非難する国際世論の盛り上がりを受け、翌80年夏のモスクワ五輪に対する世界的なボイコットにもつながった。しかし、ソ連はその後も、総勢60万人にも及ぶ大部隊を続々と送り込み、89年初めまで10年近くにわたり同国を占領した。

 当時のカーター民主党政権は、ソ連軍のカブール進攻の動きを事前に何ら察知できず、米国インテリジェンスの欠陥ぶりが国民の厳しい批判にさらされた。当時、筆者はホワイトハウス担当特派員だったが、大統領が連日のように記者会見で苦しい答弁に終始していたことを記憶している。

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