プーチンのロシア

2022年1月26日

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佐々木正明 (ささき・まさあき)

ジャーナリスト、大和大学社会学部教授

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業後、産経新聞社に入社、大阪社会部、モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長、運動部次長、社会部次長を歴任。特派員として五輪・パラリンピックやサッカーW杯を取材した。2021年春から現職。著書に『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)、『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)。

 2022年初頭の大規模イベントとなる北京冬季オリンピック・パラリンピックは開催国・中国とロシアの結束ぶりを国際社会に示す出来事となりそうだ。

 習近平国家主席は、開会式にプーチン大統領を主賓級の扱いで招待する。ロシアでは14年に南部ソチで冬季オリンピック・パラリンピックが行なわれたが、その際にもプーチン大統領は習主席を手厚く招待し、友好関係をアピールした。しかし、14年と22年時点の両国関係を詳しく比較すると、両国の蜜月ぶりも一様ではなく、ロシアの中国依存度がさらに増していることがわかる。

昨年12月に行われたプーチン大統領と習近平国家主席のオンライン会談(新華社/アフロ)

 1人当たり名目国内総生産(GDP)も立場は逆転。かつての社会主義国体制では兄貴分だったロシアは弟分の中国にもうすっかり背丈が抜かれてしまったが、資源を売って生きる兄は欧州というお得意先を失ってやせ細り、一方で、肥えて、威勢のいい弟の付き合いなしでは生活が立ち行かなくなる情勢に陥っている。

ソチ大会時と関係性は変化

 14年のソチと22年の北京オリンピック前の国際情勢を見ると、似通っている面が目につく。欧米諸国は両国の人権状況などを批判して、政府要人を派遣しない「外交的ボイコット」を展開。ロシアは隣国ウクライナ国境へ部隊を集結して軍事的緊張を高め、14年に続き、22年にも侵攻する恐れが出ている。

 一方で、中国は新疆ウイグル自治区での人権問題、台湾情勢などで国際的な批判を浴び、欧米諸国との対立が激化。バルト三国のリトアニアでさえ、中国に見切りをつけて台湾支持に舵を切り、今後、民主主義を重視する国々でドミノ現象が起きる恐れさえある。

 そうした中で、習氏とプーチン氏はスポーツの祭典を活用して、国際社会に中露の強い結びつきをアピールしようとしている。昨年12月15日に行なわれた中露首脳ビデオ会談で、習氏はプーチン氏を「旧友」と表現。北京大会への外交的ボイコットを相次いで表明した民主主義陣営を念頭に「(プーチン氏は)中国の核心的利益を守る上で中国を強く支援し、中露を分断しようとする試みには反対した」と評価した。一方で、ロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交政策担当)は「中露関係の有効性は同盟関係を上回る」と指摘した。

 それでも、ロシアにとって中国は14年ソチ大会前までは、歩調を合わせながらも諸問題で国益がぶつかることがあり、隙間風が吹いていた。「一帯一路」戦略でロシアの裏庭である中央アジア諸国との関係を深める中国とは不協和音があり、中国よりも経済パートナーとして関係が深かった欧州諸国との友好維持に神経をとがらせていた。

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