2024年11月25日(月)

プーチンのロシア

2022年1月26日

 しかし、決定的に状況が変わったのはソチ大会直後に起こったウクライナ危機だ。ロシアはウクライナ国内情勢の混乱に乗じて、南部クリミア半島を併合。ウクライナ東部の武装親露勢力を支援して、国土を蹂躙し、欧州の人々にロシアの恐怖感をよみがえらせた。

 このことに端を発して、欧米諸国はロシアに経済制裁を発動した。このころから同時に世界的な原油安となって、資源取引に頼るロシア経済に国家収入の減少とルーブル安というダブルパンチをもたらした。

数字が物語る中露の立ち位置

 数々の数字が14年以降のロシアを物語っている。

 ロシア連邦税関庁のデータによると、ソチ大会前の13年の貿易高は約8440億ドルに対して、うち欧州連合(EU)諸国との取引は全体の約49.4%の4175億ドル。20年には全体の貿易高は5690億ドルに対して、EU諸国相手の取引は全体の38.4%の2190億ドルにまで落ち込んだ。

 これに対して、存在感を強めているのは中国だ。13年に貿易高は888億ドルと全体の10.5%だったが、20年には1041億ドルと全体の17.8%にまで比重が高まっている。これまで長期にわたって国別の最大輸出国はオランダだったが、17年には入れ替わり、中国が1位になった。中国はロシアから資源や木材を買って、ロシアは中国から機械類を輸入し、欧米の制裁によって、その深度はさらに高まっている。

 両国間は12年に東シベリア太平洋石油パイプライン(ESPO)で結ばれ、19年には天然ガスパイプライン「シベリアの力」が開通。プーチン大統領は中国とのエネルギー分野の戦略的協力をさらに増強し、2国間貿易高を24年までに2000億ドルにまで拡大させる目標を立ち上げた。

 こうしてみると、欧米への関係をさらに悪化させるウクライナへの軍事的圧力も、中国との関係をさらに深化させることで経済分野での損失を穴埋めできるという胸算用があることが浮かび上がってくる。

 ロシア国民も中国との関係を良好とみている。独立系世論調査機関のレバダ・センターは中国との関係を1995年から「良い」「悪い」「答えられない」の3択で調査しているが、2009年以降、低下傾向にあった「良い」は13年11月に55%まで低下。対して「悪い」は31%にまで上昇した。

 しかし、14年のウクライナ危機以降、「良い」が急上昇し、ここ3年は65~75%台の高水準を維持するようになっている。直近の21年8月の調査では「良い」が70%。

 同様に21年8月の調査では、回答者のロシア人の55%が今後、中露関係は「強まる」と答えており、「弱まる」の9%を圧倒的に上回る。また、米露関係は「強まる」が20%、「弱まる」が34%で対照的な結果が出ている。

ウクライナ危機と台湾情勢との関係は?

 名目GDPを見ると、10年時点で中国は6兆338億ドル、ロシアは1兆6331億ドル。その後、中国は右肩上がりで成長線を歩んでいるが、ロシアは停滞し、成長さえ果たしていない。

 20年には中国が14兆8867億ドル、ロシアは1兆4785億ドルと、その差は4倍から10倍にまで膨らんでいる。コロナ禍の20年には1人当たりGDPでもロシアは中国にとうとう抜かれてしまい、どちらがシニアパートナーで、どちらがジュニアパートナーかは火を見るより明らかだ。


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