こうした中で迎える22年北京オリンピック・パラリンピックは中国への依存度を増すロシアが中国との結束を象徴づける出来事として刻まれるだろう。14年ソチ大会とは明らかに中露関係の構図が変容を見せている。
しかし、中露関係の蜜月ぶりを強調するあまり、ロシアにとってのウクライナ問題、中国にとっての台湾問題を一蓮托生のように位置づける論説が見られるが、筆者はこの主張に否定的見解を持つ。
これまで伝統的にプーチン大統領をはじめロシア政府首脳は中国の台湾への主張を全面的に後押ししたり、支援したりする公式的発言をしたことは滅多にない。それはプーチン政権がそれほど台湾情勢を注意深く観察している証拠でもある。台湾企業もロシア国内で事業を展開しており、貿易高の割合もアジア諸国では高い位置にある。
中露首脳会談は1年に4~5回開かれることもあるが、台湾問題が何かのレベルで合意に達して、2人の首脳から言及されたことなど、筆者の記憶の限りは一度もない(2人で話し合っている可能性はある)。ロシアは外面上、そもそも自国の立場を危うくする台湾問題の火中の栗を拾うそぶりを見せたことはない。
見落としてはならないウクライナと中国の交流
一方で、「一帯一路」を全面支援しているウクライナはそもそも中国との関係が深い。自国兵器を中国に輸出しており、19年には中国がロシアに代わって、最大の貿易相手国となった。コロナ禍をめぐっても、ウクライナは中国製のワクチンを受け入れた。
今年1月5日には両首脳が国交樹立30周年を祝い、電報を交換している。ウクライナのゼレンスキー大統領が「双方は各レベルで緊密に交流し、実務協力で大きな成果を挙げてきた。ウクライナ側は両国の互恵協力の大きな将来性を確信している」と期待感を示せば、習氏も「中国とウクライナの戦略的パートナーシップの発展を非常に重視しており、ゼレンスキー大統領と共に努力し、国交樹立30周年を契機に、両国関係及び各分野の協力がより多くの成果を挙げる後押しをし、両国及び両国民に幸福をもたらすることを望んでいる」と強調した。
こうした関係を軸に、ロシアがウクライナへ軍事的侵攻を行なうなら、中国は否定的対応を取ることも想定される。ウクライナにとって中国の関係はロシアの決断を防ぐ保証として働いていると言っても過言ではない。日に日に緊張感は増しているが、静観する習主席がどんな態度を見せるかが成り行きを決める大きな決定打となるだろう。