2024年4月20日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年6月14日

 運行管理の面でも、最近の日本の鉄道、トラック、バスなどには問題がある。鉄道で例を挙げれば、変電所の集約化(効率化)と停電・運行停止リスクの拡大、相互乗入れで長くなった「直通列車管理」のために生じる「玉突き運行停止」の2点である。

 危機に際しては、地域単位でのリスク分散した管理と並行代替路線確保を考えるべきだし、「あまりにコンピュータ化した運転から、運転士・車掌の資質向上とマンパワーでの『臨機応変』な対応への転換」が求められているような気がする。コンピューターシステムに頼りすぎると、「現場の実情が分からないまま」に「火災発生現場に緊急停止させる結果」が生じた例も過去にはある。

ウクライナの物流への協力提案

 そこで、国際協力・分担によるウクライナへの陸運での貢献策である。まず、米国の支援によって、2セット200両の機関車・貨車のユニットトレインがあれば、遠回りになるが、2万トンの穀物を運ぶことができる。台車のサイズもヨーロッパのタイプに工夫した車両を製造・供与する。

 ここは、経済大国・米国の出番である。2往復で4万トン、1年間に1500万~2000万トンの輸送分担(リスク回避)も夢ではないと思えてくる。なお、長期の解決策として、将来は、JR北海道が開発を進めていた貨物列車を新幹線に積み込んで運ぶトレインオントレイン方式も検討に値するのではないか。

 また、運行管理は、ウクライナの優れた鉄道網の運営と日本の正確・精緻なJRダイヤ管理技術の合作で応援、夜間など他の貨客輸送の隙間に輸送できないか。通関や検疫の問題は、ウクライナを欧州連合(EU)に早期加盟させることで克服できるのではないだろうか。

 なお、輸送ルートの確保問題について、ロシア支配地域を通るマリウポリ→アゾフ海ルートや、ウクライナ→ベラルーシ→バルト海のルートへの切替えの提案もあると聞くが、これでは、ロシアの思うツボで、「食料を武器として使うことを許すもの」であり好ましくない。やはり、王道は、なんといっても機雷で封鎖中のオデーサ港など黒海3地域の港の再開と陸上回避ルートの整備である。

 一方、輸入国日本にとっては、食料安全保障の三原則(国内生産、輸入多角化、備蓄)と同時に、ウクライナのケースで掲げたように、物流など供給網の多様化、複数化をしっかり講じていかなければならない。輸入港も同程度能力のものを近隣に複数確保しておくことが望ましい。

 「ヒトは陸(おか)の道、モノは海の道」というのは、平時のことである。

 
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